なぜ中国はソ連に代わって米国と覇権争いをするようになったのか

 

いま世界はこの二大国の争いをじっとみつめている。ともに大人口を抱える消費市場であり貿易相手国にとっては両国ともゆるがせにできないからだ。日本や英語圏の国々はアメリカに寄り添いつつあるが、イタリア、フランス、ドイツなどは中国との貿易も大事にしており、通貨の決済も「ドル」から「元」に変えるところが増えてきている。

1、2年ほど前までは、中国がアメリカと正面から対抗することは殆んどなかった。しかし、トランプがアメリカ第一主義を唱え始め、自国優先の思想を露骨に表に出し始めてきたせいか、今や中国は一歩も引かない構えなのだ。世界はまた再び覇権を巡る争いの時代にきているのかもしれない。覇権の交代は一体、何をきっかけに、どのようにして行われてゆくものなのか。過去の歴史を顧みながら、現代の覇権交代の経緯をつぶさにみておきたいものだ。

覇権国には広大な国土、世界有数の人口、軍事力、経済競争力、それらを総合した“国力”などが備わり、覇権国になるという強い意志を持たないと覇権を握ることはできない。この数年でその条件を整えてきたのは中国だ。これまで覇権を握っていたアメリカはアメリカ第一主義を唱え、ディール(取引)によって相手国に打ち勝とうとしており、これまでの覇権の概念とは違った手法をみせ始めている。これに対し、中国は従来型の覇権を目指しているように見え、今後、米、中の争いが、どんな展開を辿るのか注目される。

(TSR情報 2019年10月2日)

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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