ラグビーW杯秘話・南アフリカ代表は元祖「ONE TEAM」だった

2019.10.18
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by ニシム(MAG2 NEWS編集部)
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予選プールを全勝で1位通過し、悲願の決勝進出を成し遂げた日本代表チーム。しかし、次の日曜日に迫る決勝トーナメント準々決勝の相手は、予選終了時点で最多得点・最多トライ獲得数を誇る強敵、そして宿敵の南アフリカ。南アフリカには、今大会直前の9月のテストマッチで日本は41-7の大差で敗北しており、勝利の行方が気になります。とはいえ、2015年のラグビーワールドカップでは日本が南アフリカに歴史的な大金星をあげたことは記憶に新しいところ。不可能を可能にした栄光の軌跡は、先日ついに映画にもなりました。

1995年南ア代表を描いた感動映画『インビクタス』

一方で、南アフリカチームも一度映画化されていることをご存知でしょうか。それは、1995年に南アフリカがラグビーワールドカップを自国開催し、強豪国ニュージーランドと決勝戦で争った出来事が題材となっています。それがラグビー映画の最高傑作『インビクタス/負けざる者たち』です。

この映画は、1994年、南アフリカ初の黒人大統領に就任したネルソン・マンデラ氏が、長年続いていた人種差別や経済格差で分断してしまった国民をひとつにまとめるため、1年後に自国開催されるラグビーワールドカップに向けてラグビーチームキャプテンと共に奮闘する物語です。長い間怒りや憎しみで断絶していた人々が、ラグビーを通じて少しずつお互いを赦し合い手を取り合っていく姿は、観るものの魂を震わせます。

南アフリカの国歌が長くて多言語な、深いワケ

さて、ラグビーワールドカップ今大会では、日本人のおもてなし精神が世界中から賞賛を浴びています。特に注目を集めているのが、試合前の国家斉唱の際に、各国の国家を熱唱する日本人の姿です。

これは、元日本代表キャプテン廣瀬俊朗氏のおもてなしプロジェクトスクラムユニゾン」の提案で行われている「国家で世界をおもてなし」しようという地道な活動が広がっていったもので、日本人の友好的で思いやりに溢れた国民性と、相手をリスペクトするラグビー精神を象徴する活動として世界中のラグビーファンたちを魅了しています。
そこで週末に向けて、スタジアムやスポーツパブで歌えるように、南アフリカの国歌を予習したいところですが、聞いて驚くのが、南アフリカの国歌はとても長いこと、そして複数の言語(コサ語、ズールー語、ソト語、アフリカーンス語、英語)が出てくること。
かつて南アフリカでは、白人と黒人は長年のアパルトヘイトによって大きく断絶しており、言語、文化もバラバラでした。そこで、マンデラ大統領が国の統一を象徴するみんなが納得する歌にしようと、2つの曲(「神よ、アフリカに祝福を」と「南アフリカの呼び声」)を強引に”ガッチャンコ”したため、こんなに長い国歌が誕生したのです。

南アフリカの大統領・ネルソン・マンデラが民族和解・協調政策の一環として、黒人解放運動の象徴である「神よ、アフリカに祝福を」とアパルトヘイト時代の国歌「南アフリカの呼び声」を組み合わせ、国家の分裂を防ごうとしたものだと思われる。(Wikipediaより

長期間迫害差別を受けてきた黒人にとって、白人のスポーツであったラグビーの自国代表チームなど、憎しみの対象でしかありませんでした。同じく解放運動で特権的地位を失った白人にとってみれば、黒人解放運動の象徴である歌を歌うことは屈辱でしかありませんでした。しかし、マンデラ大統領は「過去は過去我々は未来を見よう」「ワンチームワンカントリー」と、率先して赦しと調和の姿勢を説いて回り、1年後のワールドカップ自国開催をきっかけに、南アフリカの国民を強くまとめあげていったのです。
この映画を観れば、南アフリカの国民が一つになるためにどれほどの歴史的苦難を乗り越えてきたか、そして現在の祖国にどれほどの誇りを抱いているかが、尊敬と共に理解できるはずです。

「日本版インビクタス」と称される決勝進出

さて、1995年当時の南アフリカ代表と2019年現在の日本代表には、共通点がいくつもあります。まず、自国開催であること、人種も文化的背景も違う選手たちが、お互いを理解しあい一つ(ワンチーム)にまとまろうとしていること。国全体が応援し始め、今では世界中の注目を集めていること。この類似点から、今大会での日本代表チーム悲願の決勝進出を「日本版インビクタスだ」と賞賛する声がSNSで広がっています。ぜひ決勝トーナメントでも勝ち進んで行ってもらいたいものです。

ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチが出場していた?

映画『インビクタス』の題材となった1995年大会には、なんと現在の日本代表のヘッドコーチを務めるジェイミー・ジョセフHCがニュージーランド代表選手として決勝戦に出場しています。そう、ジョセフHCは、劇中のクライマックスシーンである、南アフリカ対ニュージーランドの伝説の一戦を実際に戦った生き証人なのです。

江戸村のとくぞう [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

江戸村のとくぞう [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

もちろん映画はモーガン・フリーマンやマット・デイモンら俳優陣による再現映像なので、ジョセフHCが役者として演技しているわけではありませんが、映画を最後まで観ると、エンドロールに若かりしジョセフHCが真っ黒なオールブラックスユニフォームに身を包んで戦う実際の試合画像が流れます。チェックしてみてください。
現役時代に優勝杯を争った南アフリカ。ジョセフHCにとっても、是が非でも倒したい相手なのではないでしょうか。20日日曜日の試合が実に楽しみです。

どうせならラグビーW杯テーマソングも再チェック

ラグビーでは試合前に自国の国歌を胸に手を当てて歌いながら涙する選手の映像などが印象的で、各国の国歌に注目が集まりがちですが、大会自体にもテーマソングがあるのを忘れてはなりません。それが「ワールド・イン・ユニオン」です。メロディはホルストの『木星』のものなので、日本人アーティストによるカバー曲を思い出されるかもしれませんが、歌詞とテーマは別の、オリジナルのものとなっています。

「ワールド・イン・ユニオン(団結する世界)」の題名にある通り、歌詞は「夢がある。それは信仰や人種を超えて世界が団結し、分かつことのできない一つものになることという尊い真の夢である。この偉大な運命というべき夢の極みにいたるとき新しい時代が始まっているだろう。そのためにあらゆる障害を乗り越え、歴史に居場所を見出し、尊厳をもって生きていかねばならない。その前には勝敗にかかわりなくすべての人が勝利者である。それが世界が一つになるということである」などという内容になっている。(Wikipediaより

この曲の歌詞にある通り、世界3大スポーツイベントの一つであるラグビーワールドカップは「あらゆる障害を乗り越えて世界を一つにしよう」というテーマを持っています。

さて、試合は南アフリカの勝利、日本はベスト4ならずという残念な結果になりました。しかしながら、南アフリカの苦難の歴史とラグビーを心底愛する国民性に思いを馳せつつ、今大会は彼らに優勝を託したいと思います。

image by: Mitch Gunn/Shutterstock.com

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