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規則よりマナー。騒音をアンケートで解決したマンションの奇跡

マンションの騒音問題は、住民各々がどこまでを騒音とすべきかで揉めることが多々あるため、管理組合が規約制定する場合がありますが、規約に頼らず住民の潜在的マナーで解決を目指すマンションも存在するようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、意見交換の重要な場として「住民アンケート」が活発に機能するマンションの実例を紹介しています。

規則よりマナーで「暮らしやすいマンション」に

こんにちは!廣田信子です。

すてきなマンションをご紹介したいと思います。東京都内、地下鉄の駅から徒歩5分、築約35年、約60戸のマンションです。表通りに面していないので、静かで、建物もとてもきれいに維持されています。理事は基本1年任期の輪番制(立候補可)で、ずっと同じ管理会社といい関係でやってきています。場所がいいので、市場価格も、分譲時より上がっているぐらいで、中古で購入した若い家族が入居しています。

集会室はなく、エントランスが3つあり、3系統のエレベーターが独立しているので、人のつながりが作りにくいマンションの構造です。で、総会以外は、あまりみんなが集まる機会がなく、コミュニティ活動も特にありません。表面的に点数化をするとコミュニティ形成ができていないと思いがちですがとてもいいコミュニティの文化をつくっていて、感心しました。

それがよく表れているのが、多かれ少なかれどのマンションにもある騒音問題にこのマンションがどう対処したか…です。このマンションでは、細かい規定をつくらず、マナー意識を共有することで運営してきたのですが、住み替えで子供が多くなったり、専有部分のリフォームが盛んになる時期なので、やはり、騒音に対する苦情はあり、「規則で縛るべき」との意見も出ます。それで、理事会で検討しましたが、理事会では、「規則では縛れないので、マナーに訴えるべきという従来通りの考え方でいくことを決めたのです。

苦情がある度、広く居住者の思いを拾わず、どんどん禁止規定を作り、自分たちで自分たちの住まいを暮らしにくくしているのでは…と、思う管理組合がある中で、「規則よりマナーの文化を貫いていることに、まず、びっくりし、感動しました。

それで、理事会は、皆さんに方針を理解してもらえるようにと、アンケートを実施しています。まず、1回目のアンケートでは、気になる音や時間帯、それに対する意見を聞きました。その結果は、大多数が「集合住宅なのでお互いに気を配っていこう」という常識的な回答でしたが、生活しているのだから音がするのは当たり前。音が気になるなら人のいない所に住めばいい…と、音に対する苦情よりは反対に音に過剰に反応し過ぎることに対する批判意見が出たのです。

通常、騒音に関するアンケートをすると、あれも、これもと苦情が寄せられ収拾がつかなくなるのでは…と二の足を踏みますが、それに、正面からソフトに取り組んだ理事会も、騒音苦情より過剰に反応し過ぎることに反対する意見が多く出たことも、私には、驚きでした。

で、理事会は、1回目のアンケート結果を見てどう思うかを聞く2回目のアンケートを実施しました。

その中では、本人の良心に訴えるだけでなく、楽器演奏には防音工事を義務付けるべき…というような意見もありましたが、ほとんどは、下記のように、お互いが理解し合ってよいマンションにしていこうというものでした。

<Aさん>

 

生活音を騒音として問題にするのはどうかと思います。ピアノの音を騒音ととらえる方が住んでいると思うと寂しいです。室内作業も日中ならいいじゃないですか。テレビやオーディオも人が住んでいる安心感がしていいです。老人ホームではないので日中静かにするのは不可能です。

 

このマンションはペット可なんですから犬の鳴き声もしますよ!椅子を引く音(フローリング)はしますがお互い様なので意見する気はありません。

 

もし決めるなら、何時以降の演奏がだめなど具体的に決めて下さい。そうでないと子育て世帯がかわいそうです。意見する方も、「暮らしやすいマンション」に向けて考えてほしいです。

<Bさん>

 

気になることはありません。朝7時から夜10時までは生活(活動)する時間という認識です。活動時間帯の騒音(生活音やピアノ音)は許されると思います。

 

音を「騒音」と感じるか「生活音」と感じるかはその方の体調や周りとの関係で変わってくると思います。年配の方は育ち盛りのお子達のいる家庭をやさしく見守り若い方々は年配の方々に心を配ってゆく。日頃からよい関係を保ってゆくことで折り合って穏やかに調整していけるよう願います

<Cさん>

 

楽器の音については、音大の学生さん等なら防音室が必要でしょうけれど、子供さんがちょっと練習する程度なら、問題にするほどのことはないと思います。

 

小規模マンションの利点を生かし、相手の顔が分かって「ピアノ、頑張ってね」と言えるような関係でありたいです。

<Dさん>

 

一番騒音に感じるのは室内工事のドリルなどの音ですが、18時頃までなので仕方ありません。楽器は20時以降弾かなければ良いと思います。

 

これからの季節、窓を開けて過ごす事が多くなるので来客があった時、テレビの音量などは窓を閉めるか音量を下げる配慮は必要だと思います。22時以降、朝7時くらいまでは多くの人が眠っている時間帯だと思うので、特に注意が必要だと思います。

<Eさん>

 

ピアノを弾いているとの苦情が出たようですが、20時までなら良いのではないでしょうか。ピアノが全く弾けないマンションでは、練習できない子供たちがかわいそうです。喜ばしいことに最近若い家族が増えて、子供の数も多くなってきています。

 

集合住宅なので、子育て中の家族のことも考えて、個々の譲歩が必要だと思います

<Fさん>

 

楽器、ペット共は、ご本人にとっては大切なもので、尊重すべきですが、あくまでも個人の趣味、し好に属するものなので他の居住者への配慮は必須と思います。近隣同士の理解が何よりの騒音対策ではないでしょうか。

いかがですか?住民の方の民度の高さを感じます。

そして、このアンケート結果住民の声をそのまま皆さんに広報することで、理事会がなぜ下記の方針を決めたかがよくわかり、それぞれが、自分が出す音には気を付けよう、多少のことは気にしないようにしよう、…と抵抗なく思えるのではないでしょうか。

理事会からは下記の方針を決めたことを住民に知らせました。

  1. 規則は特に定めない
  2. 「暮らしやすいマンション」に向けて皆さんのご協力をお願いする
  3. 特に時間帯は定めないが常識的な就寝時間には特に気配りを

お互いの声や思いを知れば、自ずからとるべき行動が分かる…こういう大人のマンションが私は大好きです。

で、将来に向けて、「暮らしやすいマンション」をどう考えるか、楽しくみんなで話し合える「お茶会ワークショップ」をやってみることになりました。ほっておくと、住み替えで世代間ギャップがどんどん広がり、ぎくしゃくすることが増えてしまいます。

今、特に問題がないマンションでも、予防的に、お互いの意見の違いを知る機会をつくることはとても大事だと思います。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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