MAG2 NEWS MENU

ヨーカ堂もイオンも瀕死。総合スーパーの凋落が止まらない理由

かつては隆盛を誇った総合スーパー(GMS)大手が苦境に立たされています。誰もが知る老舗のイトーヨーカ堂や流通最大手イオンがともに不振に陥り改善策を講じるも、両社ともに凋落に歯止めがかかりません。この先、GMSに明るい未来はあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、GMA大手2社が追い詰められた原因を分析するとともに、両社が今後成長を果たすために取るべき施策を考察しています。

ヨーカ堂は減収減益、イオンリテールは赤字 総合スーパーの凋落鮮明

流通大手セブン&アイ・ホールディングス傘下の総合スーパー(GMS)大手、イトーヨーカ堂の業績が冴えない。2020年2月期第2四半期(19年3~8月)決算は、営業収益が前年同期比3.5%減の5,928億円、営業利益が72.7%減の5億円と減収減益だった。既存店売上高は0.8%減とマイナス成長となった。

ヨーカ堂は長らく不振が続いている。19年2月期は営業収益が前期比0.6%減の1兆2,361億円、最終損益は78億円の赤字(前の期は58億円の赤字)だったが、減収は3年連続最終赤字は5年連続となっている。業績悪化に歯止めがかかっていない状況だ。営業利益は53.0%増の47億円と増益だったが、営業利益率はわずか0.4%に過ぎない。

ヨーカ堂はこれまで不採算店の閉鎖や売り場の大胆な見直しを実施し、店舗の構造改革を進めてきた。売り場に関しては、不振が続く自営の衣料部門と住居部門を縮小してテナント化を進めた一方、十分なニーズがある食品部門はさらなる強化を図ってきた。しかしこうした対策が功を奏しておらず業績回復がままならない状況が続いている。

そこでセブン&アイは10月10日にヨーカ堂の構造改革案を発表。展開する158店舗のうち33店舗で閉店やグループ外企業との連携を検討するほか、従業員数を22年度末には18年度末比で約1,700人減らす方針を示した。

22店舗ある食品スーパーの「食品館」については分社化を視野に入れる。首都圏でスーパーを展開するヨークマートなどグループ企業と連携して新たな店舗フォーマットの確立やサプライチェーン(供給網)の効率化などを実現し、収益性を改善したい考えだ。

継続可能な103店舗については、自営の衣料・住居売り場のさらなる縮小を実施して代わりに有力テナントを誘致するショッピングセンター化を推進し、脱GMSを図る

ヨーカ堂の苦戦が続いているが、GMSの苦境は同社だけではない。流通最大手のイオンもGMS事業の不振で苦しんでいる

まずは同社の連結業績を確認する。20年2月期第2四半期(19年3~8月)決算は、営業収益が前年同期比0.6%増の4兆2,902億円、営業利益が3.9%減の863億円だった。純利益は64.1%減の37億円。連結子会社の不正会計の処理で費用を一括計上したことが響いた

次に同社の中核事業、GMS事業の業績を見ていく。同事業の営業収益は前年同期比0.3%減の1兆5304億円、営業損益は75億円の赤字(前年同期は58億円の赤字)だった。減収となり赤字幅は拡大した。

同社の中核子会社のイオンリテールが足を引っ張った。売上収益は前年同期比0.3%増の1兆880億円とわずかながらも増収となったが、営業損益が63億円の赤字で、前年同期から赤字幅は28億円拡大した。最終損益は98億円の赤字(前年同期は81億円の黒字)だった。

イオンリテールの店舗数は増えている。19年8月末時点で411店を展開しているが、2月末からは8店舗増えた。一方で既存店売上高は苦戦しており、19年3~8月期は前年同期比0.3%減とマイナス成長だった。19年2月期もマイナス成長となっており、1.4%減だった。個店毎の販売不振が続いており、それが全社の収益性低下につながっていることがうかがえる。

通期ベースの業績も冴えない状況が続いている。イオンリテールの19年2月期の営業収益は前期比0.6%減の2兆1,854億円と減収だった。営業利益は微増の118億円、最終損益は118億円の黒字(前の期は169億円の赤字)とどちらも前期からは改善しここ数年は上向いているが、営業利益率はわずか0.5%に過ぎず決して十分とはいえない。

もちろんこうした状況にイオンは手をこまぬいているわけではない。GMS改革を掲げて事態の打開に動いている。ヨーカ堂と似たかたちで衣料の絞り込みと食品の強化を図っている。また、子ども用品や家具・雑貨など4分野の専門店を分社化する方針で、それに向けて組織改革を進めている。加えて、他の専門店の分社化も視野に入れる。分社化して商品開発などの機能を強化し、専門性を高める狙いがある。こうした施策でGMS改革を成し遂げ、業績を上向かせたい考えだ。だが、改革は途上で、目立った成果を出せていないのが現状だ。

ヨーカ堂やイオンリテールなどGMSは苦境に立たされているが、その根底には「価格の高さ」がある。

衣料と住居の分野ではユニクロやニトリといったSPA(製造小売り)を中心とした専門店が低価格を武器に台頭した結果、GMS各社の衣料と住居の商品は割高感が出るようになった。食品分野では競合の食品スーパーやディスカウントストアで食品を低価格で販売するところが台頭しており、こちらもGMS各社に割高感が出てきている。

食品スーパーでは例えば首都圏で店舗展開している「オーケーストアが圧倒的な低価格を武器に勢力を伸ばしている。商品数を絞り込んで大量に仕入れることで仕入れコストを抑えたほか、刺し身パックにはツマを入れなかったり、弁当やサラダなどにはしょうゆやドレッシングなどを付けず別売りにするなどして不要なコストを省き、低価格を実現している。

運営会社のオーケーの業績は好調だ。19年3月期決算は、営業収益が前期比10.2%増の3,942億円、営業利益は27.8%増の183億円だった。営業利益率は4.7%にも上る。純利益は28.2%増の131億円だった。大幅な増収増益で好業績が続いている。

神戸物産が展開する「業務スーパー」も低価格を武器に成長している。輸入食品やプライベートブランド(PB)の食品を豊富に扱っているが、輸入食品は世界各国から直輸入し、PB商品は国内の自社グループ工場で製造するなどしてコストを削減し、低価格を実現している。また、ナショナルブランド商品は卸を通さずにメーカーから直接仕入れることで中間業者にかかるコストを削減し、こちらも低価格だ。

神戸物産も業績は好調だ。18年10月期決算は、売上高が前期比6.2%増の2,671億円、営業利益は7.6%増の157億円だった。営業利益率は5.9%にもなる。純利益は24.2%増の103億円だった。神戸物産も増収増益と好調だ。

オーケーストアや業務スーパーの他にも、「ロピア」「トライアル」「ベイシア」「アコレ」「ビッグ・エー」といった低価格のスーパー・ディスカウントストアが全国各地で台頭しており、ヨーカ堂やイオンリテールは厳しい戦いを余儀なくされている。

ヨーカ堂やイオンリテールが今後成長を果たすには、店舗の魅力を高めたり、付加価値の高い商品を開発することが必要だが、低価格を武器とする競合に対抗するためにも、低価格販売に耐えられるだけのローコスト運営がより一層求められるだろう。いずれにせよリストラや構造改革は待ったなしの状況だ。この1、2年が勝負所となりそうで、両社の行方に注目が集まる。

佐藤昌司さんが満を持してYouTubeチャンネルを開設!
店舗経営について動画でわかりやすく解説。
YouTubeチャンネル 佐藤昌司.TV

image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

佐藤昌司この著者の記事一覧

東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業 』

【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け