訪日客に文句ばかりの日本人に足りぬ「迷惑」をカネにする発想

 

問題は、インバウンドの観光市場だけではありません。例えば「撮り鉄」のおかしなマナーが問題になっていますが、例えば「撮り鉄の殺到しそうな特殊な運転」、具体的には民鉄の新車をJR線を使って回送する(甲種輸送)とか、珍しい列車の運行、廃車される車両の最後の運行などは、しっかり告知ししっかり撮影場所を用意してその代わりにしっかり金をとればいいのです。

撮影といえば、農地に良い撮影スポットがあると、農地が踏み荒らされるとか言うことで、観光客も外国人旅行者も極悪人のように叩かれるし、せっかくの美しい樹木を「心無い観光客が撮影に殺到するので苦渋の判断だ」などといって切ってしまうと言う話もありました。

これも同じことで、どうして撮影地をしっかり管理して、その代わりに金を取るという方向で「金を介在させてウィン・ウィンの関係を作る」ことができないのでしょうか?勿論、自分たちは農業のプロでサービス業のプロでないとか、人手がないというのなら、簡便な代行業者とか、無人の「撮影許可証発行機」とか置いて、そこでID取得しないで撮影すると、画像認識ロボットでSNSに上げられなくするとか、色々工夫したらいいと思うのです。

同じように疑問なのが、人気の飲食店が廃業するというケースです。例えば、品川区の大崎にRという「つけ麺」の名店がありました。今でいう、東京風の「つけ麺」つまり、魚介濃厚トンコツに太麺を絡ませてネギとか魚粉とかアクセントつけるスタイルの事実上の考案店で、常に大行列となっていました。

ですが、周辺住民のイチャモンで廃業に追い込まれてしまったのです。これもおかしな話で、そんなに行列ができるのなら、品川区もたこ焼きの屋台や、「つけ麺」の後のスイートの屋台とか出して、ジャンジャン活性化したらいいのに、「閑静な住宅街が…」というクレーマーに屈してしまったのです。

ラーメン屋ということでは、これは北海道だったと思いますが、「地元の人の憩いの場」だったのが、ミシュランの星がついた途端に「一見さんでうるさくなって雰囲気が壊れたので廃業したというニュースもありました。

百歩譲って、その店主が「静かに商売したい」というのであれば、そのレシピと屋号を第三者に譲渡して、せっかくついた「星」を生かして、地域経済が活性化し観光客も喜んでいた状況を継続することでいいと思います。その上で、自分は移転して別の屋号で「地元向け」にやればいいのです。これも理解に苦しむ話です。

理解に苦しむといえば、子供の行事であるハロウィンに大の大人があそこまで大騒ぎするとか、車ひっくり返すほどのストレスがあるのに、そのストレスの原因と戦わないとかいうのも全くわかりません。

そうなのですが、渋谷という街で、あれだけ毎年大騒ぎがあったのなら、それを禁止するとか、アルコールはダメとかいうのではなく、「街全体をホコ天にして全部バー」にして、「オール渋谷ハロウィン祭り」とでも銘打って、相当な金を取ったらどうなのかと思います。大晦日にしても、サッカーW杯でA代表が勝った時とか、とにかく盛り上がりそうになったら、無粋なDJポリスとかが「ダメですよ」とか珍奇なトークで治安維持するのではなく、全体を商業化してしまえばいいと思うのですが、どうでしょうか。

いずれにしても、金を介在させることで参加者全員が笑顔になれるような方策を取らずに、興味を持って世界中から積極的に集まってくる人を批判したり、盛り上がっている人を犯罪者扱いするというのは、なんとも不思議な感じがします。

image by: noina / Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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