日本も他人事では済まぬ。台湾出身の評論家が警告する真の危機

 

愚民、奴化教育の真相

戦後日本の教育とマスメディアは、ほとんどが「反日日本人」によって牛耳られてきました。ただ、日本がGHQ支配下だったのは戦後7年あまりのあいだだけでしたからこれだけで済みましたが、台湾は違いました。台湾は、司法、軍隊、警察、公務員など、国家の根幹をなす全ての要素を国民党に牛耳られてきました。蒋介石親子による独裁専制が長期間にわたって敷かれてきたのです。

この独裁専制時代を経験している戦前世代の台湾人は、日本がGHQに占領されたことにさえ羨ましさを抱いたものでした。GHQと国民党の文化レベルがあまりに違ったからです。

中国政府にとって理想的な人物像は、「奴隷愚民」です。そのため中国で行われている教育は、「愚民化」「奴隷化」教育です。民に「知恵」を与えると天下を取られてしまうため、「由らしめる」のみでよいとして、愚民化教育を行ってきました。

戦後70年以上が経過しても、日本に「教科書問題」があるように、教育を変えるのはとても難しいものです。台湾では、李登輝時代から「教育問題」に取り組んできました。

私は、大学関係の仕事で台湾の教科書問題について現地調査をしたことがあります。国民党政府は、国民党員のみを学校長にしてきました。それ以外の立場の人は排除したのです。李登輝時代になってもなかなか改善されませんでした。

現在、民進党政権下でも立法院(国会)の過半数が民進党になっても、なおも教育と司法は国民党に牛耳られ、軍事と外交も指一本触れさせません

表面的には民進党政権でも、裏では国民党がなおも一大勢力として存在しているのです。これは約2,000年前の漢の時代からある「陽儒陰法」「外儒内法」と同じく、表と裏の二重支配です。

台湾の真の問題とは

政策や経済を変えていくことは難しくないが、文化、風土、伝統、風習などを変えることはとても難しいものです。

去年、台湾・高雄市の民間団体による主催で、日本統治時代の1944年10月12日からアメリカ軍が台湾中部の都市に対して行った「岡山大空襲」についての70周年記念集会が行われました。岡山は私の故郷であり、私は空襲の生き残りとしてメインスピーカーとして呼ばれたのです。

主催者の調査によると、アメリカが台湾に投下した爆弾の40%があの空襲で落とされたそうです。なぜなら、岡山には当時、日本帝国海軍最大の南進基地である海軍航空部隊があったからでした。

私が台北で宿泊したホテルには、中国から集まった民主活動家各派の会議がありました。私はその参加者の一人に、中国は「国のかたち」からすれば「絶対に、そして永遠に、民主化は不可能だ」との私見を伝えました。より分かってもらうため、ローマ共和制からローマ帝国の例を引用して話ました。ローマ帝国は、民主共和制から領土が拡大するにつれて、民主、独裁、皇帝制へと発展していったという例を挙げて説明したのです。

20世紀に入って、西洋だけでなく日本までもが開国維新時代となりました。国民国家となり、「国のかたち」を変えていき、「列強」にもなりました。

しかし、「国のかたちを変えるのは決して容易なことではありません。中国は、20世紀に入って、武昌の軍事クーデターである『辛亥革命』を境に、帝国から中華民国、中華人民共和国と3度にもわたって「国体」を変更しただけでなく、毛沢東とトウ小平、習近平のそれぞれの時代においても、人民共和国の政体は決して同じではありませんでした

あの当時、毛沢東が中国を飛び越えて世界革命と社会主義社会を夢みたことは、決して「夢のまた夢」ではなかったのです。それは、トウ小平時代の全体主義としてのファシズムや、現在の習近平が掲げる「中華復興」という、先祖帰りの儒教的全体主義とも違うものでした。

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