見直しで年金停止される人が大幅減
そもそもなぜ働くと年金が停止されたりするのか。くどいようですが働くというのは、厚生年金に加入するという事を意味する。それは老齢の年金というのは、そもそもは労働から引退した人が貰うものだからという考えだから。約30年ほど前までは働くなら、退職するまで年金の受給権そのものを発生させないという事もあった。高齢で働けなくなるから、じゃあ年金を支給して保障しましょうというものなんですね。だけど、年金が支給される頃になっても働くのであれば年金は必要ないだろうという事で、その間停止しましょうという事で停止されたりする。
この在職老齢年金制度は割と昔からある制度で、昭和40年改正から始まりました。昔はさっきみたいにちゃんと計算するというか、このくらいの給与貰ったら年金は2割停止とか、5割停止とか8割停止…みたいなものでした。これだと例えば20万円貰ってる人は年金2割停止だったのが、20万円をちょっと超えたら5割停止になって不公平だった。昔はそういう不公平感があったので、平成16年改正から今のような計算になっています。
とはいえ働くと年金が停止されるというのは変わらないですよね。
というわけで、2019年時点の見直しの方向ではありますが、在職による停止基準額を28万円から47万円に引き上げようという方向になりました。実施は2021年度を目指されている。この停止基準額が28万円から47万円になると、さっきの計算の場合だとどうなるか。
さっきは月の年金額10万円に対して85,000円も停止されてましたよね。年金月額が15,000円になっちゃった。でも停止基準額が28万円から47万円に引き上がるとする。そうすると、年金月額10万円+月給与(標準報酬月額)30万円+直近1年間に貰った賞与を月換算した額5万円=45万円<停止基準額47万円だから、停止はかからない。だから、この場合は年金も10万円丸々もらえるし、心おきなく労働による収入を得る事ができる。まあ47万円超えなければですね^^;
でも47万円になれば年金が停止される人はかなり減ります。冒頭にも貼った厚生労働省のリンクを見てみると、今現在は65歳未満の人で年金に停止額がかかってる人は55%(約67万人)ほどいますが、それが17%(約21万人)までに減る見通しとなっています。
● 在職老齢年金の見直し(厚生労働省)
現代のように高齢者雇用が促進されてる時代だから、年金が停止されなくなると就労意欲がより高まりそうですね^^ でも停止される人が少なくなった以上、その分国の年金支給という負担が増えるから国の財政としては負担増になりますけどね。
そういえば、年金停止される!っていうと損するだけっていう認識が強いですが、働くとその分厚生年金加入期間が増える事になるので、退職時の年金総額は増える事になる。年金貰いながら働いていた人は退職の翌月から、年金停止は完全に無くなり、年金受給後に働いた期間分が増額する(年金の退職時改定という)。
※ 追記
65歳以上の在職者の停止基準額は現在は47万円。この65歳以上の人の停止基準額47万円を51万円に引き上げようという方向でもあります。
あと、在職による年金停止はあくまで老齢厚生年金(報酬比例部分)のみに対してであり、それ以外の年金には一切停止額はかからない。ただし、年金の繰り上げで65歳未満で経過的加算貰える人は、経過的加算にも停止額がかかる。
なお、厚生年金に加入しない働き方の人(自営業者とか自由業等)は停止される事は無い。
image by: Shutterstock.com