ニューヨークで財布を拾ってもらうとどうなる?日本人社長の実話

 

謝礼が幾らなら納得するのか?

彼は、少し声を荒げ「こっちには、もっともらう権利がある!!!!」と引きません。「だからこそ、80ドル渡したろ!そっちにもらう権利はあっても、これ以上払うこっちの義務はない!」と僕も譲りません。押し問答しながら、ふと振り返り思い出します。「あれ…彼、恩人だったよな…」そう、彼は恩人。財布を拾ってくれた本人。

少し、後半、流れがハリウッド映画にありがちなサスペンススリラーっぽくなったけど、もとはといえば、彼が落し物を拾ったとくれた善意の電話から始まりました。もし、彼が悪人であれば、拾った財布をそのままネコババできたはず。律儀で電話をくれ、わざわざカフェで10分以上待っていてくれた。絶対に、悪い人ではない。でも、権利は譲らない。お人好しでもない。

言い合いをしてるうちに、少しおかしくなって顔がニヤついてしまいます。あぁ、これがニューヨーカーなんだな、と。日本だとどうでしょうか。もちろん例外はあるにしても、どちらか、ではないでしょうか。

ネコババする人。もしくは、届けて、お礼を渡された時に、「いえいえいえ、とんでもないです。(人として)当たり前のことをしたまでですから。え?いいんですか?そんな、申し訳ない、当たり前のことをしたまでなのに、こんなお礼を頂くなんて。そうですか、では、はい、ありがとうございます(もしくは、最後まで受け取らないか)」と恐縮されるか。お礼が少なすぎる!と面と向かってはなかなか言いづらい風潮ではないでしょうか。

人として、ネコババなんてしない。ジーザスも見てるし、したら、地獄に行ってしまう。でも、もちろん当然のRight(権利)は主張させてもらう。勝手に彼をストーカーちっくに仕立てて、恐怖を感じていたのは僕のひとりよがりな想像で、よくよく、考えると、彼は何もおかしいことを言っていない。むしろ、人として、いちばん自然な考えかもしれない。

この自然な考えがなかなか日本人には難しい。ネコババするか、謝礼すら遠慮するか。そうじゃなくて、正しいのは、ネコババをせず、届け、謝礼をもらう。間違いなく、それが正解なはず。拾った財布から400ドルを抜いて、財布を捨てても誰にもバレなかっただろうし、今、ここで僕と電話で言い争いをする必要もなかった(笑)。

そう考えると、ちょっと憎めなくなり、「わかったよ(笑)…で、あといくら欲しいの?」そう聞く僕に、彼は、思い切ったように「……20ドル。合計100ドルはもらってもいいはずだ!!!!」と言います。

可愛いと思って笑いをこらえる。400ドルをポケットに入れなかった正直者に、「おっけー、20ドル、渡すから、またロビーに来てもらっていい?」と伝えました。「実は…いま、もう、いる」。

慌てて20ドル持って、ロビーに降りました。彼は納得したように上機嫌で帰っていきました。この一連の流れで、彼こそがニューヨーカーだと理解します。常識的におかしいのは、こっちの方だった、と。ただ、80ドルが安いとは思わないけどな!!!!

image by: 1000 Words / Shutterstock

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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