東京代々木で14日まで開催「よみがえる気仙沼線写真展」のこと

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東京代々木のカフェヌックでこの時期恒例の「よみがえる気仙沼線写真展」が3月14日まで開催されています。今年の写真展のテーマは「船のある風景」。この写真展に関わってきた『ジャーナリスティックなやさしい未来』著者の引地達也さんは、来年迎える東日本大震災10年に向けて、3月11日という「点」に留まらずに継続した活動をしていくと表明しています。

東日本大震災を「点」にしないための気仙沼線写真展

3月11日で東日本大震災から9年となった。私にとっての震災は心の模様を変えた大きな出来事で、その日はただの点に過ぎないのだが、あの日から今に続く線を考えると、震災のインパクトは現在行っている日々の支援活動に確実につながっている。

来年は震災から10年になることから、次の3月11日を「10年が経過した」と他人事のような感慨に浸るのはやめて、10年目までの、この1年の日々を、被災地に足を運びながら見つめ、対話をして過ごしていきたいと考えている。

毎年恒例となった東京・代々木の「カフェ・ヌック」での「気仙沼線写真展」は現在開催中だが、今年のテーマは「船のある風景」で、かつてあった漁村の集落と船とともにひた走る気仙沼線のかつての姿を展示している。そして、来年の10年目の展示には、私のこの1年を表現してみようと思う。

気仙沼線写真展が始まったのは2013年。前年に震災の風化防止のために私が作詞し発表した歌曲「気仙沼線」が縁で、青森県在住のアマチュア写真家、工藤久雄さんから震災前の気仙沼線の写真の提供を受けたことから始まった。

震災で福島県、宮城県、青森県の沿岸を走る鉄道は大打撃を受けたが、三陸鉄道や仙石線など多くが復興を遂げる中、宮城県石巻市の前谷地駅と気仙沼市の気仙沼駅を結ぶ気仙沼線はその沿線である沿岸部から住居が消え、沿岸部の柳津駅と気仙沼駅間が不通となった。

2012年8月20日からバス・ラピッド・トランジット(BRT)で運行を開始したが、鉄道事業の復活は絶望的で、2019年11月12日に国土交通省に廃止届が提出され、2020年4月1日に廃止予定である。アイボリーと緑のツートンカラーのあの列車は二度と気仙沼沿岸を走ることはないのである。

その気仙沼線のさまざまな風景を撮影していた工藤さんの写真の数々は圧巻だった。気仙沼線と空、気仙沼線と海、気仙沼線と夕日、気仙沼線と星空、気仙沼線と雪、気仙沼線と鳥、気仙沼線と樹木、気仙沼線と大漁旗、気仙沼線と駅、気仙沼線と雪、気仙沼線と鉄橋、気仙沼線と畑、気仙沼線と桜、気仙沼線とアジサイ、気仙沼線と海水浴場、気仙沼線と漁船…。

それら写真数百点は見事に気仙沼線が走る沿岸の風情を浮かび上がらせ、消滅した風景を今に伝えてくれた。カフェ・ヌックで始まった写真展は東京都内の公民館や図書館、地下鉄駅の展示スペースなどを巡回し、そして現在、震災の時期の恒例行事としてカフェ・ヌックでの展示が続けられている。

気仙沼線写真展の当初は写真だけの展示だけだったのが、やがて「気仙沼線写真展WITHことば」として、気仙沼線にまつわる現地の方々の言葉を展示する企画も行った。

「気仙沼線は海側の席から埋まっていくんですよ」(菅原茂・気仙沼市長)や「陸(おか)で過ごしていると、やっぱり、海さ戻んなくちゃなんねえ、って、そう思うのさ」(気仙沼市のサンマ漁師)など、私が直接聴いた言葉をパネル展示するだけで、気仙沼線の追憶は、写真とともに、鮮明に浮かび上がってきた。

昨年は「気仙沼線写真展─桜─」で、桜という華やかなイメージと心象風景とのギャップが気になったが、それがまた風景への儚さが瞬間の尊さも表現しているようで、心をつかんだ印象がある。

そして今年の「船のある風景」。写真の中の船は震災で流されたものも多いはずで、海とともにあった気仙沼線の雄姿にも哀愁を漂わせてしまう。来年の10年に向けて、今を見つめ始める日々が始まった。

image by: shutterstock

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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