これでも安倍首相は無関係か。森友学園文書から消された「記述」

 

初めて改ざん作業をしたのは2017年2月26日のことだ。日曜日を家族と過ごしていたところに、近畿財務局の池田靖統括官から「本省から指示された修正作業が多いので手伝ってほしい」との電話連絡を受け、午後4時半ごろ、登庁した。

その9日前の2月17日、衆議院予算委員会で安倍首相が繰り出したのが今や有名になったこの答弁。「私や妻はこの認可あるいは国有地払い下げに一切かかわっていない。もし、かかわっていたのであれば総理大臣をやめる」

2月24日には佐川理財局長が「(森友学園との)交渉記録はない」と答弁し、それに合わせるように2日後に始まったのが、赤木氏を巻き込んだ決裁文書の改ざん作業だ。

その後も修正の指示があるたびに、他の職員とともに抵抗したが、所詮、逆らい切れるものではない。

本省理財局の中村総務課長や田村国有財産審理室長からの電話を財務局管財部長経由で受けた美並近畿財務局長は「本件に関して私が全責任を負う」と言って、本省指示に従うよう促した。

改ざんされた決裁文書からは、以下のような記述が削除されている。

平成26年4月28日 (森友学園との)打ち合わせの際、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください。』とのお言葉をいただいた。」との発言あり。

産経新聞社のインターネット記事に森友学園が小学校運営に乗り出している旨の記事が掲載。記事の中で、安倍首相夫人が森友学園に訪問した際に、学園の教育方針に感涙した旨が記載される。

契約交渉にあたった担当職員が、森友学園を特別扱いせざるを得なかった理由を決裁文書に残しておきたかったのかもしれない。佐川氏は決裁文書を読んで、そこまで書かれていることに驚愕し、抹消を命じたのだろう。

赤木氏の「手記」には、佐川氏への痛烈な批判が書き連ねられている。

「パワハラで有名な佐川局長の指示には誰も背けない…修正する箇所を事細かく指示したのかどうかはわかりませんが、補佐などが過剰反応して、修正範囲をどんどん拡大し、修正した回数は3回ないし4回程度と認識しています。…森友事案はすべて本省の指示…嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです」「野党議員からの様々な追求を避けるために原則として資料はできるだけ開示しないこと、開示するタイミングもできるだけ後送りとするよう指示があったと聞いています」

公僕たる国家公務員が、公文書に手をつける罪深さ。赤木氏の心の震えが伝わってくるようだ。

「手記」に安倍首相夫妻に言及している部分はない。しかし、安倍首相夫妻が森友学園の教育勅語を中心にした教育方針と小学校新設に興味を抱かなければ、森友学園の籠池理事長夫妻に小学校建設の野望が生まれることもなく、たとえ生まれたとしても、安倍首相夫妻が肩入れしている事実がなければ、財務省が、豊中市内の国有地を破格の条件で貸したり、売却したりすることはなかっただろう。

2018年6月4日に財務省が発表した「決裁文書改ざん調査報告書」にはこう書かれている。

17年2月17日の衆議院予算委員会で安倍首相が「私や妻がかかわっていたのであれば、総理大臣をやめる」と答弁したのがきっかけとなり、「本省理財局の総務課長から国有財産審理室長および近畿財務局の管財部長に対し、総理夫人の名前が入った書類の存否について確認がなされた。…理財局長はそうした記載のある文書を外に出すべきではなく、最低限の記載とすべきであると反応した。具体的な指示はなかったものの、総務課長と国有財産審理室長は決裁文書の公表を求められる場合に備えて記載を直す必要があると認識した。

「報告書」は佐川理財局長から「具体的な指示はなかった」としているのに対し、赤木氏の「手記」は、佐川氏の指示があったと断言している。野党はこのため財務省に、身内ではなく第三者による「再調査」を求め、佐川氏を再び証人喚問するよう与党に働きかけていくかまえだ。

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