MAG2 NEWS MENU

ドイツに学べ、日本政府に求められている新型コロナ景気対策とは

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、様々な職種に休業が要請されていますが、その損失については今のところ国からの補償は期待できないようです。そんな安倍政権の姿勢に異を唱えるのは、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、「危機にあって、国は支援をケチってはいけない」と主張しその理由を記すとともに、安倍首相が見習うべきドイツ・メルケル首相の施策を紹介しています。

新型コロナ景気対策は、どうあるべきか?

日本も感染爆発にむかっている感じですね。緊急事態宣言が出されたことで、感染拡大のスピードが緩やかになるのでしょうか?後1週間ぐらいすると明らかになるでしょう。これでスピードが落ちなければ、「さらに厳しい措置を取らざるを得ない」ということですね。

ところで、RPEでは2月から書いていますが、今年は「リーマンショック翌年、09年よりも景気が悪化する」ことは確実です。このこと、ついにIMFの専務理事が認めました。

IMF、「世界恐慌以来の経済危機」 新型ウイルスで170カ国に打撃

BBC NEWS JAPAN 2020年04月10日

 

国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエヴァ専務理事は9日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)により、2020年の世界経済の成長率が「急激なマイナス」となり、1930年代の世界恐慌以降で最悪の経済危機に直面するとの見通しを示した。

それで、政府には大胆な景気対策が求められます。今日は、これについて考えてみましょう。

こんな時、金を「ケチって」はいけない

1929年からはじまった世界恐慌の教訓はなんでしょうか?「大不況の時、政府は金をケチってはいけない」です。

この恐慌がはじまったとき、アメリカ大統領は、古典派(市場が自由であればすべてよし)のフーバーさんでした。彼は、世界恐慌を実質放置して、危機をどんどん深化させた。

アメリカが景気対策をはじめたのは、1933年にルーズベルトが大統領になってから。彼は、即座に大規模な金融緩和を実施し、大々的に公共事業を行いました(ニューディール政策)。

ルーズベルトよりも早く世界恐慌の影響を克服したのはヒトラーです。彼は、40%だったドイツの失業率を、完全雇用にもっていった。ヒトラーも、アウトバーン(高速道路)建設など公共事業を大々的に行っています。

08年、リーマンショックから、「100年に一度」と呼ばれる経済危機がはじまりました。09年、アメリカ大統領に就任したオバマさんは、きっちり世界恐慌の影響から学んでいた。それで、即座に大規模な金融緩和を行った。そして、目玉が飛び出るほどの財政赤字を出しながら、次々と企業を救済していったのです。

アメリカの財政赤字は07年、4,205億ドルでした。リーマンショックが起こった08年、9,754億ドルで2倍以上増加。オバマが大統領になった09年、財政赤字は、1兆9,068億ドルまで増えました。これ、1ドル110円で計算すると、209兆円です。つまり、日本の国家予算の2倍の財政赤字を、1年で出した。

でも、これでよかったのです。オバマさんは、フーバーさんの失敗と、ルーズベルト、ヒトラーの成功から学んでいた。彼のおかげで、アメリカは2010年からプラス成長に転じた。以後9年間の成長と好景気を謳歌することになったのです。

この話の教訓は何か?危機にあって、国は支援をケチってはいけない。ケチるとフーバーになりますよ。

日本の景気対策は、ドイツを学べ

先日ドイツのテレビDWを見ていたら、ドイツに住むロシア人、アレクサンドル・ミンドリンさんの話をしていました。アレクサンドル・ミンドリンさんは、ドイツの居住権をもっていますが、国籍はロシアのまま。

彼は、ドイツに暮らし、ロシアからの観光客にガイドをしている個人事業主です。今回の、新型コロナ騒動で、ロシアからの観光客が消えました。それで、収入が激減した。困った彼は、ドイツ政府に支援を申し込んだ。すると、翌日、なんと「3か月分の収入に相当する額」が入金されたというのです。

彼は、非常に感動し、そのことをフェイスブックに書きました。フェイスブックをやっている人は、「Alexander Mindlin」で検索してみてください。彼が4月2日に投稿した内容です。原文はロシア語ですが、今はグーグル翻訳などで、ロシア語を知らなくても、だいたいの内容を知ることができます。何が書いてあったのか?長文なので、ポイントを書いておきましょう。

この後彼は、自分が生まれたソ連や、ソ連崩壊後にできた新生ロシアでは、「全然助けてもらなかった」ことを回想します(2人子供を産んだ家族を対象に行われる「母親資金」以外)。その後彼は、ドイツに引っ越し、仕事をし、税金を払い、永住権を持つ外国人として生活しています。

ドイツで不幸(新型コロナウイルスの大流行)が起こりました。その不幸は、全世界で起こった。いくつかの国家は、不幸の中で、住民を助けることにした。そして実際に助けてくれた。国から助けてもらった経験がないアレクサンドルさんは、感動しました。そして、フェイスブックで、「国家の力とはなんだろう?」と読者に問いかけます。彼は、いいます。「困難な時に、手を差し伸べてくれる力なのではないか?」。彼は、「私は今日初めて知った、いや感じた。国家とは何か。国家の力とは何なのか」と書きました。3万6,000人がこの投稿を見て、2万人がシェアしました。

皆さん、私は、「ドイツ政府が“外国人”のアレクサンドルさんを助けたこと」を強調したいのではないこと、ご理解いただけるでしょう。ドイツ政府は、ドイツ人の個人事業主を助け、外国人であるアレクサンドルさんすら助けたのです。

この話、「一人の証言だけでは、信ぴょう性がない」と思い、ドイツ在住の読者さんたちに聞いてみました。実際、ドイツでは、1~3日ぐらいで、支援金がもらえるそうです。日本では?

ケチな日本政府は、世界恐慌のフーバーと同じ過ちを繰り返す?

緊急事態宣言が出て、知事が「休業要請」することが増えてきました。ところが、この要請に応じて休業しても、国は損失分を補償する気がないようです。

7都府県は休業要請に応じた事業者らに国が補償するよう求めたが、西村氏は国による休業損失の穴埋めは重ねて否定した。
(共同通信 4月11日)

国の求めに応じて休業した。収入はゼロになる。それどころか、お店をやっている人は、店舗代を払うので大幅な赤字になる。国は、こういう人たちに、「死ね」というのでしょうか?私は、自虐史観の持ち主ではありませんが、この件に関して、日本政府は全然ダメで、ドイツはとても立派だと思います。

日本政府は、新型コロナウイルスの影響で休業になる人たち、特に個人事業主、中小企業の所得を補償すべきです。税務署に問い合わせて、前年同月比の収入と同じ額を支援したらいいでしょう。だから2019年4月期の収入を調べて、その額を入金すればいい。

ちなみにメルケルさんは、新型コロナ対策が見事で、支持率が急上昇しています。毎日新聞4月8日。

欧州ではスペインやイタリアが致死率10%前後で推移する中、ドイツは約2%だ。独公共放送ARDが4月2日に公表した世論調査結果では、メルケル氏への満足度は前月比11ポイント増の64%と急増し、ここ数年で最高値を記録。下落傾向だった与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の支持率も同7ポイント増の34%と上昇した。

日本政府も、是非ドイツのやり方を見習ってほしいと思います。

image by: 首相官邸

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け