香港の今日は、台湾の明日。この時期に強権発動する習近平の魂胆

 

動じない中国。覇権取りへ、進む“支持固め”

では中国サイドはどうでしょうか。アメリカからの直接的な中国非難に対しては、どちらかといえば受動的な(passiveな)反応に見えますが、自ら主導権を発揮できる分野では強硬姿勢を強めているように思われます。

トランプ政権からコロナ感染拡大における中国の責任は大きいと非難され、アメリカの市民団体が中国共産党に対する賠償請求をちらつかせても、「中国もウイルスの被害者だ」と述べるに止めていますし、あとでお話しする香港国家安全法に対して米欧が行う“一国二制度という約束を反故にする”と非難を受けても、「内政干渉だ」と一蹴して“相手にしない”戦略を取り、淡々と28日の全人代で可決させるという荒業に出ました。

しかし、一帯一路政策に代表されるように、自ら主導権を発揮する形で、経済力と技術力を前面に打ち出し、「内政干渉はしない。Business is business」という主義を貫くことで東南アジア諸国、中央アジア諸国、アフリカ諸国へと着々と中国経済のベルトを延長していっています。

スリランカやバングラデッシュ、そしてモルディブなどでは『中国の一帯一路は債務の罠』との批判も内外で上がっていますが、その拡大のスピードが滞ることはこれまでのところありません。債務漬けとの非難も上がり、中国嫌いを突き付けられても、実質的に(経済的に)中国から離れることが出来ない支援国の状況を掴み、エチオピアやカンボジアがいい例ですが、外交上の中国へのフルサポートを得ることに成功しています。

例えば、日本のメディアでもショックをもって取り上げられた台湾のWHO総会への参加問題ですが、アメリカなどが仕掛けた台湾サポート票も、実際には全加盟国196か国の1/3にも満たない支持しか得ることが出来なかったのは、メディアには報じられなかった“中国の勝利”と言えるかもしれません。

先ほどアメリカ側からの動きをお話しした【コロナのワクチンや治療薬】に関わる内容については、WHOが立ち上げるCOVID-19関連の知財・データの共同利用プラットフォームを中国はフルサポートする動きを見せることで、After Coronaの国際公衆衛生部門でも覇権を握りに行こうとする魂胆が見えます。WHOで固めている票数や、欧米(日)から見捨てられたと感じる途上国へのマスク外交(医療物資やスタッフ、サービスの提供含む)攻勢を仕掛けることで、着実に“中国への支持固め”を進めようとしています。

ここでは、中国が国を挙げて世界各国の健康・衛生・医療に関わる分野での戦略物資の製造と流通を握ることで覇権を握りに行こうとしています。例えば、欧州で売られている医療用マスクの8割は中国製と言われています。さらにコロナの治療にも用いられた鎮痛剤(パラセタモールなど)10種の医薬品の7割強がインドからの輸入に頼っていますが、その基盤のほとんどを中国企業が握っているようです。

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