香港の今日は、台湾の明日。この時期に強権発動する習近平の魂胆

 

今回のCOVID-19のケースでは中国も“被害者”ですので一概には黒い企みを非難はできないかもしれませんが、ヒトとモノの移動が著しく制限された今回のようなケースでは、戦略物資の過度の中国依存は、欧州各国にとっては人命に関わる国家安全保障への危機と捉えることができるでしょう。

ゆえに、欧州委員会は戦略物資の調達手法の抜本的な見直しを加盟国と企業に要請していますが、すでに出来上がった物流網と経済合理性に立脚した国際調達システムを前に、どこまで迅速に対応できるかは、欧州の高い人件費などとの問題と絡めて、非常に困難と言えるかもしれません。そう、見直しの機運はあっても、なかなか急激に中国への依存度を下げるのは難しいことで、中国はまだ欧州に対して大きな影響力を発揮することになります(恐らくアメリカに対しても同じでしょう)。

米中の覇権争いがさまざまな面で拮抗している状況は変わりませんが、米中貿易戦争の勃発から3年ほどの間に明確化してきたのは、【グローバル経済の失墜と経済のブロック化の進行への恐れ】です。

COVID-19の世界的パンデミックとAfter Corona時代への動きを見てみると、これまで以上に【経済と社会の分断の脅威】が高まり、経済のブロック化が進む中、各国における失業問題と貧困問題の深化(悪化)が進んでいます。そしてそれは、先述した戦術的物資の輸出入を握るという【地政学・国際政治上の力の源泉】の奪い合いが米中間で過熱する中、各国で自国回帰・ナショナリズムの高まりへと人々の心が操られているように思われます。

「香港国家安全法」を成立させた習近平の狙い

非常に広範にわたる安全保障上の懸念ですが、ここまでの問題は、恐らく度合いは増したと思われますが、Before Coronaまでのbusiness as usualの延長線上にあり、米中以外の国々にとっては、米中間のバランスを取っていれば生きていける状況でしょう。

しかし、5月28日に中国全人代で可決された香港国家安全法(正式名は『香港特別行政区における国家安全保護に関する法律制度』)を巡る米中対立は、経済や情報戦に留まらない武力対立に発展する危険性もあるのではないかと考えられます。

香港における一国二制度の成り立ちについては専門家の方に解説をお任せしますが、「香港から中国全土に民主主義を広げよう」という米欧の“希望”は、今回の全人代の【一国二制度を堂々と無視する】決定で打ち砕かれ、逆に一言でいえば【香港の中国化の強化】が進むことになりそうな雰囲気です。

もちろん、米欧は痛烈に批判し、アメリカ・ポンペオ国務長官は「香港に付与してきた特恵待遇の剥奪」にまで言及しましたし、トランプ大統領は、まだ内容についてははっきりしないものの、以前議会上下院で可決されている香港人権民主法への署名をもって対中制裁を発動するとの脅しもかけています。もしかしたら、先週発言したように断交へのプロセスをスタートさせるのかもしれません。そして、中国が嫌がる【チベットカード】や【ウイグル自治区カード】を次々と切ってくるかもしれません。

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