香港の今日は、台湾の明日。この時期に強権発動する習近平の魂胆

 

米中対立が生む国際安全保障のNew Normal

ここまで述べた内容は、あくまでも“可能性”ですが、5月28日の全人代を通じた意思表示は、もしかしたら中国による西側世界との決別の意思表示とも理解できます。もしそうだとしたら、アメリカがちらつかせる香港に対する特権待遇の剥奪と中国に対する追加的な経済制裁を発動することで、米中は一触即発の時代に突入するかもしれません。ただの推論と笑われるかもしれませんが、台湾当局は『次は自分ではないか』『本当にそうなるのではないか』と真面目に恐れているようです。

中国はここ20年ほどで一気に超大国の地位に上り詰めました。それを支えてきたのが中国の戦法である『三戦』の重視だったと言えます。心理戦(相手国民や敵の心理を混乱)、法律戦(国際的な場での法的解釈への働きかけ)、そして宣伝戦(イメージ戦略)の3つです。

一帯一路政策は確実に三戦に基づく戦略ですし、また軍事的な覇権を拡大するために軍拡を行うにあたり、国際世論を味方につけるべく三戦の手法を用いてきました。そこに通常兵器と核開発という武力をくっつけ、最近ではサイバー攻撃という武器も加えることで、【戦力のハイブリッド化】を進めて強国化しています。そしてこれは、アメリカが第2次世界大戦後、超大国の立場に君臨するにあたり、CIAなどを用いて行ってきた戦略でもあります。

今、Hybrid化した戦力を有する2大国の存在と、それぞれを支える“同盟勢力”の拡大とブロック化、トルコやイランといった地域における超大国の存在、そして“テロリスト”と呼ばれるような非政府組織の勢力拡大は、危機対応を非常に困難かつ複雑にしてしまいました。特にサイバー攻撃については、いつの間にか対立を作り出すことが可能になり、犯罪と戦争との間のグレーゾーンを拡大しています。

今回、新型コロナウイルス感染拡大による経済と社会における“分断”が生み出した現実は、人々の分断と連帯を生み、またサイバー攻撃の威力と脅威も一気に高めました。After Coronaの生活様式をNew Normalと呼ぶことが多くなってきましたが、私はコロナ渦の中で顕在化していく米中の覇権拡大の動きとその他との格差の拡大、国内回帰とブロック化、そして国際安全保障上の懸念のハイブリッド化も、私たちの今後に突き付けられたNew Normalだと考えます。

それに対応していくには、武力衝突を防ぐという紛争調停などのハードコアな安全保障はもちろん、医療分野、食糧分野、環境安全保障、水、エネルギー、情報など多岐にわたるエリアをカバーできる安全保障の専門家と実務家が必要ですし、私たち一人一人が「どう考え動くのか」をしっかりと見据えていないといけないでしょう。

コロナの混乱の中で中国が強行した香港国家安全法可決が、恐らく米中の対立を激化させる結果となり、その余波がアジア全体はもちろん、世界を震撼させるだろう状況下で、そのどちらとも太いリンクを持つ日本はどう振舞うべきか。しっかりと考えて行動しないと大きな波に飲み込まれ、間に挟まれてその居場所を失ってしまうことになるかもしれません。皆さんはどうお考えになりますか?

image by: Alessia Pierdomenico / Shutterstock.com

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