香港の今日は、台湾の明日。この時期に強権発動する習近平の魂胆

 

ここまでの内容を見てみると、ICTを取り入れ、AI時代の国際協力のモデルケースというイメージを持たれるかもしれませんが、懸念すべきは、このメンバーに中国やロシア、WHOが参加していないということです。

新型コロナウイルス感染拡大の起点である中国(武漢市)は、情報隠蔽などの批判はあるものの、4月には“克服宣言”を出し、経済を再開させていることから、多くの知見が蓄積されていますが、このCORD-19には組み入れられていません。そして、こちらも痛烈な批判のターゲットとなっていますが、国際公衆衛生・医療の核となるべきであるWHOも疎外されており、私の印象ではピュアな医療・研究協力というよりは、完全に国際情勢に翻弄された【中国疎外】のためのネットワークであり、実効性はパーフェクトとは言えないと思われます。

CORD-19の取り組みとパートナーシップに対しては高く評価し、大いに期待していますが、世界的な危機に際して、政治と地政学が地球規模の(多国間の)協力を阻んでいるかもしれないことに懸念も覚えます。

他には、ワクチン特許共有の動きや治療薬にかかる特許の共有を進める動きでアメリカが取るリーダーシップです。日本でもアビガン(富士フィルム)と並んで大きく取り上げられたレムデシビルの特許を持つギリアド・サイエンシーズ社は、「レムデシビルの特許技術・情報使用に対しては、後発薬開発において一切ライセンス料を課さない」と発表し、大いに評価されました。

この動きも先述のCORD-19に関係する動きですが、確実にアメリカがコロナ治療薬とワクチン開発において世界的なリーダーシップを取るのだという意思表示に思えます。知財に世界で最も厳しく口うるさいはずのアメリカがこのような姿勢を打ち出すことで、世界的な製薬業界を擁するドイツなどの欧州各国も、日本もこの流れに乗らざるを得ないようにうまくアメリカにコントロールされています。

実際にはWIPO曰く「知財の存在が治療を妨げる障害になっているとの証拠はない」とのことですが、ここでも地政学的な傾向がGlobal Public Goods(世界公共益)の向上を阻害していると見ることもできるでしょう。個人的にはアメリカ主導の動きやパートナーシップを評価していますが、あからさまな中国(およびWHO)外しの姿勢には懸念を抱きます。

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