新型コロナの対人口死亡率が日本で極端に低い理由を考えてみる

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新型コロナウイルスに関するさまざまな統計的数字の中で、もっとも間違いが少ないものが死亡者数です。そして、人口100万人当たりの死亡者数を欧米諸国と比較すると、日中韓3ヶ国の死亡者数が極端に少ないことがわかります。今回のメルマガ『8人ばなし』では、著者の山崎勝義さんがその驚きの数字を示し、こうしたことが起こった理由について考えられるだけの考察を試みています。なぜ日本及び東アジアで死亡者数が少ないのか、結論は得られるのでしょうか。

COVID-19と日本人のこと

少々乱暴な話だが、全世界の人々が等しく新型コロナウイルスに曝されたとする。その場合、理論上の感染者数は最大で全人類、最小で感染確定者数となる。無症状感染者の存在がある以上、この最大値と最小値の間に実感染者数があるとしか言えず、その数は意外に多いのかもしれないし、あるいは少ないのかもしれない。つまり、当てにはならないのである。

一方、疫学において最も揺れが少ない数字は死亡者数である。この死亡者数と統計学的に既に知られている人口を比較することによって得られる数値、即ち対人口死亡率は途中の感染状態を一切無視したものであるがために感染症対策(特にその初期段階)においてあまり重要視されることはない。

しかし、国家間、地域間、民族間においてその数値に極端な違いが生ずる時にはそれは無視できないものとなる。その差異の中にこのウイルス定義上の何らかのヒントがある可能性があるからだ。

以下、人口100万人当たりのCOVID-19による死亡者数を挙げる。数値は全てWHO「Coronavirus Disease Dashboard」(2020年6月8日16時[中央ヨーロッパ夏時間])によるものである。
イギリス 596人
スペイン 580人
イタリア 561人
フランス 446人
アメリカ 332人
ドイツ  104人
日本    7人
韓国    5人
中国    3人

一目して分かることは東アジアの国の死亡者が極端に少ないということである。因みに多数の死者を出したヨーロッパと東アジアをつなぐユーラシアの大国ロシアの死亡者は41人だからちょうど中間と言えるのかもしれない。少なくとも地理的にはユーラシア大陸を東から西へ行くに従って、その100万人当たりの死者数は少から中、中から大ときれいな分布を見せる。

それにしても日本を含む東アジアの人間に死亡者数が少ないのは一体どういうことであろうか。極論をすればその理由は以下の二つである。

  • ヨーロッパ型ウイルスの毒性が強い
  • 東アジア人がウイルスの毒性に対して強い

仮に前者だとすると厄介である。というのも、日本において感染第1波(通算で言えば第2波)をもたらしたウイルスは欧米型だということが既にゲノム解析によって分かっている。その欧米型が突然変異により、さらに強い毒性を持つようになったとしたなら日本上陸と同時にヨーロッパの惨劇の再現となってしまうからだ。

ただこの可能性は低いように思う。それはヨーロッパにおける感染拡大のピークが概ね1つと言っていいものだからだ。仮に欧米型バージョン2ウイルスが登場していたなら、追い打ちピークがヨーロッパでさらにひと山来ていたに違いない。

とすると残るは後者ということになるが、その場合は以下の3つの可能性が考えられる。

  • 日本の医療水準が格別に高度である
  • 日本人(東アジア人)が先天的理由で(遺伝子レベルで)ウイルスの毒性に強い
  • 日本人(東アジア人)が後天的理由でウイルスの毒性に強い

1番目の医療水準に関しては、言うまでもなく、特別優れている訳ではない。基本的に医療が高度になればなるほど国家間の質の差はなくなる。頭打ちになるからだ。一方、量に関して言うなら今まで再三指摘してきた通り日本は寧ろお粗末な側に入る。これは準備あるいは制度の問題である。つまり放っておこうと思えば、いくらでもほったらかしにできる類のものなのである。そしてその無策こそが第1波感染拡大における医療崩壊寸前(あるいは同然)という事態を招いたのである。

残るは先天的理由と後天的理由である。前者の場合、人種や民族というものと深く関わってくる。一方後者の場合だと、風土との関わりが無視できない要素となる。

次号においてはこれに関しての考察(というより推論か)を行いたいと思っている。興味深いことに人文地理学や免疫学の話になりそうである。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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