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中印紛争

ヒマラヤ山脈西部カシミールのガルワン渓谷で起きた中国とインドの軍事紛争では死傷者が両軍に出たが、中国が両国の停戦合意した線より、インド側に新しい施設を作ったことで、今回起きたことが衛星写真で確認できた。

中国は、国境紛争地域の全体で自国の主張を押し通す方向のようである。南シナ海での成功で、強引な軍事侵略がどこでも通じると見ているようだ。

日本の尖閣列島、台湾本土、南シナ海の端のインドネシア領であるナトナ諸島にも中国は手を出し始めている。中国国内での不満がたまり、愛国心を喚起するために、紛争全地域で攻勢に出ているようにも見える。

しかし、それは中国の「孤立化」を引き起こすことになる。ロシアの軍事産業の最大のお得意先はインドであり、インドとロシアは、最新兵器の共同開発も行うほどで、印露の友好関係は固い。そのインドと中国が戦争を起こすことになったら、ロシアはインドに味方することになる。

インドは、ロシア兵器体系で軍備が整備されているので、米国兵器体系にはすぐにはできない。その点、中国は自国兵器体系にして、ロシア兵器体系ではない。ロシアはインド軍とは共同作戦が簡単に取れるが、中国とは密接的な共同作戦は難しい。

日本は米国兵器体系であり、米軍との共同作戦を前提にしている。

中国は、コロナ感染と揚子江の洪水、バッタの農業被害で国内に不満が溜まっているので、領土拡張で民衆の目を海外に持っていきたいのであろう。また、中国はパキスタンとの友好関係からインドとは上海機構加盟国ではあるが、それほどには重要視していないし、パキスタンとインドの紛争ではパキスタンを支援することになる。

しかし、それでもインドとの不仲は、戦略的な損害が大き過ぎるように感じる。インドもコロナ感染拡大で、国内で不満が溜まり、中国軍の侵略を放置できない。インドは、ロシアだけではなく米国や豪州、日本などとも手を結び、中国に対峙するしかない。

一方、ロシアもインドがロシアから離れて米国兵器体系になったら、最大の兵器の売り先がなくなる。

米国は、インドがロシア兵器体系だったので、パキスタンとの関係を構築してアルカイダを駆逐するために援助していた。しかし、パキスタンは、中国との関係を重要視してからは援助をしなくなっている。

結果、米国とインドの友好関係と、パキスタンと中国の同盟関係という形になった。この2つのペアが対立関係になってきた。ロシアはインドにつくか、中国につくかの選択になる。

このため、ロシアも中国との関係を見直すことになると私は見る。ロシアは中立ではなく、インドとの関係優先から中国との関係を悪化させても仕方がないとなるだろう。

このため、米国、日本、ロシア、インド、豪州、ヨーロッパ諸国の「中国包囲網」が完成することになる。

この包囲網は、中国にとっては脅威になるはず。インドとの関係悪化は、中国にとって最大の戦略的ミスとなるような気がするが、どうであろうか?

日本は、中印紛争が「繁栄と自由の弧」戦略にとって、完成を促進させることになる。

さあ、どうなりますか?

image by: Gints Ivuskans / Shutterstock.com

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