徳田医師が解説。コロナ感染の初期症状が軽くても軽症と言えぬ訳

 

無症状の感染者

新型コロナのデータが蓄積されるに従って、無症状または症状の軽い感染者からも多くの人々に感染させることが明らかになってきた。このような人々は基本的に元気であるので、フィットネスジムや屋形船やライブハウスに出かけることができる。むしろスーパースプレッダーになるような感染者は無症状または症状の軽い感染者のことがあるのだ。

無症状または症状の軽い感染者を検査の適用から除外するような戦略ではこのようなケースの多くを見逃してしまうことになる。症状の軽い人であっても1週間は自宅安静にしなさいと言うのだから検査しなくても同じだ、と言う意見はもっともであるが、それは行動経済学的にはナイーブ主義だ。症状の軽い感染者は1週間自宅の個室にこもって絶対安静にすることはほとんどない。

ウイルス量を調べる研究によると、症状がある感染者と、症状が出る前の時期の感染者と、症状が無い感染者でほぼ同じ量が確認されている。もちろん、咳やくしゃみがある感染者の方が感染力がより強いと考えられる。実際、クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号のデータからも無症状者からの感染が示唆されていた。現時点までのデータでは、感染成立総数のうち、10~44%は症状がない感染症または症状が出る前の時期の感染者から感染していると考えられている。

この事実は、症状が出る前の感染者も積極的に見つけ出して隔離をしていく戦略を取らない限り、この感染症を封じ込めることはできないことを意味する。世界の国々はその方向で動いているが、日本の動きは遅い。クルーズ船のデータが手元にあったのにもかかわらず、だ。これまでの戦略が妥当ではなかったことを素直に認めて、新たな戦略を採用すべきだったとのアカウンタビリティーが今求められているのだ。

●文献:
Mizumoto K, Kagaya K, Zarebski A, Chowell G. Estimating the asymptomatic proportion of coronavirus disease 2019 (covid-19) cases on board the Diamond Princess cruise ship, Yokohama, Japan, 2020. Euro Surveill2020;25:25. doi:10.2807/1560-7917.

image by: Shutterstock.com

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