軍事アナリストが「調査の虫」を刺激されたドキュメンタリー映画

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7月18日に東京渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開され、順次全国で公開される映画『誰がハマーショルドを殺したか』。1961年、第2代国連事務総長ダグ・ハマーショルドが飛行機事故で死亡した事件を追ったドキュメンタリーは、事件の真相に近づくに留まらず、アフリカの闇と呼べる謀略の痕跡にまでたどり着きます。軍事アナリストの小川和久さんは、この映画で元記者としての「調査の虫」が大いに刺激されたようで、主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』の編集後記で紹介しています。

映画『誰がハマーショルドを殺したか』を観賞して

久しぶりに、私の中の「調査の虫」がムズムズするような映画に出会いました。18日から全国で公開された『誰がハマーショルドを殺したか』です。

第2代国連事務総長ダグ・ハマーショルドは、1961年9月17日夜、北ローデシア(現在のザンビア)上空で乗っていたチャーター機が墜落、56歳で亡くなりました。

ハマーショルドは在任中に亡くなった唯一の国連事務総長ですが、その死には謀殺説がつきまといます。それは、理想主義者ハマーショルドの後押しによってアフリカ諸国がこぞって独立し、ダイヤモンドなどの鉱物資源をはじめ、様々な資源を手にしていた植民地宗主国の恨みを買っていたからです。ハマーショルドは、関係国が死んで欲しいと願っていたただ一人の事務総長とも言われています。

コンゴを手放すことになったベルギーに始まり、利害関係で結ばれた米国、英国、フランス、南アフリカなど関係国の殺意に満ちた視線がハマーショルドに注がれます。そういう中、コンゴ動乱の停戦調停に向かっていたハマーショルドの専用機DC-6が墜落、全員が死亡します。

謀殺説が飛び交うなか、事故機には被弾や爆発の痕跡が発見されなかったことを理由に、いったんは事故説で決着を見ますが、2013年、国連が調査委員会を設置、調査に乗り出します。2017年10月に公表された調査報告書は、外部からの攻撃や脅威が墜落の原因である可能性を示唆しました。

映画は、事件の謎を追うスウェーデン人とデンマーク人ジャーナリスト(監督)が、現場写真など断片的な証拠を丹念に集め、事件を知る人物を追うなかで、チャーター機をジェット戦闘機で撃墜したとされるベルギー人傭兵に関する証言を手にしたほか、予防接種と偽ってエイズウイルスを拡散させ、黒人の絶滅を企てた白人至上主義者の研究所の存在など、アフリカの闇とも呼ぶべき謀略の痕跡にたどり着きます。

これ以上はネタバレにつながりますから、観てのお楽しみにしますが、陰謀説でもフィクションでもありません。これぞドキュメンタリーだと頷きながら、この編集後記を書いています。(小川和久)

image by: Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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