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Go Toだけじゃない。自民・二階俊博幹事長「利権」のカラクリ

収束どころか全国へ拡大しつつある新型コロナの感染ですが、そんな中でも「GoToトラベル」を推し進めようとする政府・与党に批判の声があがっています。なぜ、政権与党の政治家たちは、民意に反して「GoTo」をゴリ押しするのでしょうか? 元国税調査官の大村大次郎さんは、自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、「GoTo」の旗振り役である自民・二階俊博幹事長を例にあげながら、二階氏ら政治家の「利権」と「カネの流れ」を白日の下に晒しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2020年8月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

「誰が何のためにGo Toトラベルを推進したのか

7月22日からGo Toトラベルキャンペーンが始まりましたね。

各地で新型コロナの感染者が急増しており、過去最高を記録する自治体もある中で、「こんな時期に始めなくても」と国民の大半が思ったはずです。

またGo Toトラベルに使う金があったら、医療関係者にボーナスを支給したり、PCR検査の拡充、人工呼吸器、エクモの補充、集中治療室の増設や、失業者も増えているのだからそういう人たちの手当てに使うべきじゃないか、と思ったのは筆者だけではないはずです。

一体、誰が何のために、この時期にGo Toトラベルを推し進めたのでしょうか?

今回はそれを明らかにしたいと思います。

このGo Toトラベルを強力に推進してきたのは、自民党幹事長の二階俊博氏とみられています。

幹事長というのは、自民党でNo.2のポストだとされています。ざっくり言えば二階氏は、自民党で二番目に偉いわけです。そして二階氏は、全国旅行業協会(ANTA)の会長を30年近く務めており、また自民党の観光立国調査会の最高顧問でもあります。観光族議員のラスボスという存在です。

二階氏の政治団体は、複数の観光団体から470万円の献金をうけていることがわかっています(『週刊文春』2020年7月30日号より)。いずれにしろ、自民党幹事長という立場からみても、Go Toトラベルにおける責任は逃れられないはずです。

様々な「疑惑」の人

この二階氏は、観光業社からの470万円の献金だけではなく、これまでも数々の利権関係の疑惑が報じられてきた人なのです。

筆者は別に、独自の取材をして二階氏の悪事を暴こうというわけではありません。今から書くことは、過去に新聞や雑誌等で報道された記事を整理しただけです。それでも「こんなに利権関係の疑惑がある人なの?」とびっくりするほどのことが出てくるのです。

「献金を受け取った業界のために便宜を図ったのなら、汚職になるのではないか?」

と思う人もいるでしょう。

しかし、現行の日本の法律ではそういうことでは汚職にはならないのです。日本の法律における汚職というのは、具体的な事業などにおいて依頼関係があることが条件となります。

たとえば、「●●橋の建設工事において指名の便宜を図り、その見返りに●●万円もらった」という感じです。企業や業界団体から献金をもらって便宜を図ったとしても、「この事業の便宜ためにお金を受け取った」という個別の利益供与が証明されない限りは、汚職にはならないのです。

また、2012年の民主党政権時代に起きた「特許庁の新システム導入」における不正入札疑惑についても二階氏の名前はあがっていました。

サンデー毎日2012年10月28日号によると、この「特許庁の新システム導入」は、東芝が入札した後、「ザクロス」「ONE ON」「VORTECHS」という企業に外注に出されており、この三社はいずれも、二階氏が懇意にしていたり、二階氏と関係があったりしていたということです。

日中関係でも疑惑が

二階氏は、早くから日中友好活動、日韓友好活動にも積極的に携わっています。2000年には「北京オリンピックを支援する議員の会」に参加しています。

韓国、中国との関係が悪化した2015年2月には1400人の大訪問団を率いて韓国を訪れています。同年の5月には3000人の大訪問団を率いて北京を訪れました。この訪問団は、官庁、各都道府県、旅行業界、運輸業界など二階氏と関係のある業界に大々的に動員がかけられたものです。

日中関係、日台関係、日韓関係を良好なものにしようというのであれば、筆者としては何も文句はありません。が、二階氏の政治活動には、必ず利権が結びつくのです。

たとえば、二階氏の地元の和歌山県で経営破綻した「グリーンピア南紀」が、格安で中国系企業「香港BOAO」に売却されましたが、これは二階氏の働きかけによるものなのです。

香港BOAOのオーナーと二階氏は昵懇の間柄であり、香港BOAOオーナーの日本人妻は、二階氏が関係する企業の取締役を務めていました。

しかも、この「グリーンピア南紀問題」はこれだけにとどまりません。「グリーンピア南紀」は、新装開業するということを条件に香港BOAOに売却されたのですが、いつまで経っても新装開業をする気配がないので、地元の議会が契約解除を決議しました。

すると、香港BOAOは違約金を求め、最終的に地元は1億7000万円を香港BOAOに支払う羽目になったのです。

弱小派閥なのに最有力の不思議

二階氏は、自民党で二階派と呼ばれる派閥を率いています。この二階派は、国会議員の人数でいえば、自民党では5番目であり、弱小勢
力といえます。が、二階派のパーティー集客力は、自民党でも最高とされおり、一回のパーティーで4000人を集めたこともありました。

現代の日本政界において、パーティーの集客力というのは、その政治家の権力を示すバロメーターでもあります。パーティーで人を集めれば集めるほど資金を得ることができます。パーティー券は数万円もするのに、ほとんど食事らしい食事も出ないので、その差額は主催者側の収入になるのです。また人がそれだけ集まるということは、選挙の時の集票にも大きく関係するというわけです。

しかし、この政治家のパーティーというのは、「癒着」や「利権」の温床になっているのです。

企業や業界団体が政治家に献金をすれば申告し公表しなければならず、世間から批判を受けやすいものです。しかし、パーティー券の購入であれば、それを逃れることができます。

政治資金規正法では、一応、20万円以上のパーティー券を購入した者の氏名等は、申告しなければならないことになっています。が、一つの企業からの参加でも、役員や社員などがそれぞれ独自にパーティー券を購入したことにすれば、申告の必要はないのです。

20万円以上のパーティー券購入の「あっせんをした者」も申告しなければならないことになっていますが、あっせんをしたかどうかというのは、どうにでも言い逃れができるのです。

政治家としてはパーティー券を買ってくれる企業や業界には、便宜を図りたくなるはずです。

ちなみに、二階氏のパーティーに参加するのは、ほとんどが観光業界、建設業界の関係者だったそうです。世間的に言えば、二階氏は観光業界、建設業界から多額の献金を受けていたのと同じはずです。

ですが、現行の法律では、パーティー券という形を取っていればOKということになっているのです。そして、二階氏のパーティー券をたくさん買ってあげる業界は、今回のGo Toトラベルのように大きな恩恵を受けることができるのです。

日本の政治というのは、なんて古い世界なんでしょうね。そして、こういう政治家が、日本の政権与党のNo.2なのです。新型コロナ対策で政府が不手際ばかりになるワケです。日本の政治システムのあまりのお粗末さが新型コロナ禍で露呈してしまったということになるでしょう。

image by: 内閣官房内閣広報室 / CC BY/

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