大人たちがゴールを描ければいじめは解決できる
最後の仕上げの時期になりました。クラス替えです。進級し新学期を迎え、彼女が心を許す美術の先生が担任になりました。また、彼女を無視していた女子とは、別のクラスになるようにクラス分けをしました。加えて、同じクラスに小学時代の友達を入れました。
新学年になって最初のランチの時間、そっとのぞきに行くと、彼女は自然に机の向きをかえ、お友達とお弁当ランチをしていました。これで、私たちからは卒業です。もう廊下に出て、情緒不安定になることはありませんでした。
彼女の精神が安定し、授業も集中して受けられるようになり、円満な人間関係を形成することができるようになったのは、新しい環境を作ることができたためと、それに至るプロセスのなかで、しっかりとゴールが見通せていたからです。
時として、思春期の子どもたちを教育指導する際に、原因を発見し分析するだけではなく、その問題を乗り越えるためには、子どもたち自身に力を持ってもらうことが大切です。
いじめのシグナルを見過ごさず、解決していくためには、苦しんでいる子の心に注目し、悩みの根本を見抜き、大人たちが、ありありとゴールを描いて、そのために何をするか、といった視点で力を合わせて支援していけることも解決に至る道筋だと考えます。
社会福祉士・精神保健福祉士(元保護観察官)
前名古屋市教育委員会 子ども応援委員会スクールソーシャルワーカー
現社会福祉系大学 講師 堀田利恵
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