女子中学生の小さなSOS。教師も見ぬふりの「いじめ」から子を守れ

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自殺原因の一つとして多く報道されているにもかかわらず、思春期の子供たちの精神を壊していく「いじめ問題」は、いまだに無くなる気配がありません。いじめのシグナルを見逃さないよう努力している学校もあるようですが、本人が「いじめを受けている」と言わない場合の対処がうまく行かないようです。今回の無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』ではスクールソーシャルワーカーの堀田利恵さんが、いじめを受けているのは明らかだが、不登校にもならず、いじめを受けているとも言わない生徒の救済を体験事例を用いて紹介しています。

教師も親も「いじめに気づかない」どこにでもある悲劇

「子どもたちのシグナルを見過ごすな!」というフレーズは、イジメ撲滅のための社会啓発のキャンペーンで使われることが多くあります。しかし、実際には、これができる教師、学校は少なく、しばしば子どものイジメ自殺という悲しい事件が起きたりします。

日本の場合、意識の高い学校や、有意義な研修会もあったりしますが、どのように子どもたちの発信するシグナルをキャッチするのか、どのようなプロセスで解決したか、という部分に関しては、個人のスキルに負うことが多く、そのノウハウが学校現場で共有されることは少ないのです。

シグナルを見過ごさないためには、日ごろから子どもたちとの会話や交流、行動観察、人間関係の把握、家庭状況を知ることが重要です。しかし、それだけでは足りず、他に、「深い洞察力」というものが必要です。深い洞察力は、その状況を正確に把握する力、原因を分析する力、どんな結果に至るであろうかを推察する力、そして良い解決に導くための先見力、そして何より、子供たちの心を理解する力、思考をはかる力が必要となります。

女子中学生の不可解な行動。もしや――

ある秋の日、私は、大規模校A中学校から相談があり支援を依頼されました。それは、ある中2の女の子が、教室で落ち着いて授業を受けることができない、授業中、トイレに行くと言い席を立ち、そのまま廊下をふらふらとしてしまう、どうもメンタルに問題があるのではないか、といったものでした。依頼を受けてスクールカウンセラーとともに訪問しました。まずは本人に意識させず、周囲にも悟られないよう、学校見学という自然な形で校長先生に誘導していただいて、授業参観及び校内巡回のスタイルで彼女を観察することにしました。その子は、ふらふらといった悠長な表現ではおさまらない状態でした。教室に入れなくて半泣きで廊下にたたずんでいたり、時に、窓から顔を出し、もしかしたら、その窓から飛び降りてしまうのではないかと危惧される状況もありました。

教務主任さんによると、どうも家庭では彼女に対して切迫感を持っていらっしゃらないということでした。メンタルが心配なので、母親に精神科で受診するよう勧めたところ、母親は仕事で忙しく受診が難しいと何度も断られたとのこと。とうとう業を煮やした先生は、母親の同意のもと土曜日に生徒を連れ出して、近隣のメンタルクリニックで受診させたところ、医師から「特に問題なし」と診断されて、頭にきていることを話してくださいました。学校にいる間、その子は、廊下で泣いたり、うずくまったり、情緒不安定なので、先生としては自殺でもされるのではないか、と心配だったのです。ですが、医師の前では、ニコニコと笑顔で話ができ、あっけにとられたというのです。

そのあと保健室の女性の養護教諭さんからもお話を聞くことができました。「彼女はランチルームを利用していない。お弁当を持ってくるがどこにいるか誰も知らない。昼休み時間が終わり、午後の授業が始まる前に姿を見せるので、トイレで食べているのではないか」といったものです。

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