気象庁は謝るな。台風10号「特別警報見送り」に批判殺到の異常事態

 

もっとも、予想より発達しなかった可能性を考えることは重要だし、予報の空振り率の検証作業も必要でしょう。そういった積み重ねが、次の予測の精度向上にもつながっていくことも確かです。

でも、「予想より発達しなかった」からといって、なぜ、謝る必要があるのか。

私には全く理解できません。

この数年起きた気象災害の多くは、「出し遅れ」によるものなので、気象庁はあえて早くから「危険」を訴えた。そもそも最近は過去の経験やデータからは、予測できない気象現象が増えているのですから、「最悪の事態」を考えて当たり前なのです。

「特別警報」予告が見送りになったことで、一部の人たちから「予想が外れることがあることを、きちんと伝えた上で注意を促すべきでは?」という意見が出ていましたが、そういったエクスキューズが、避難の遅れにつながるのです。

昨年、各地に猛威を振るった台風19号を覚えていますか?

台風19号では、7県の59河川90カ所で堤防が決壊し、洪水や土砂に襲われ亡くなった人が続出しました。この台風が襲来する前、気象庁は「狩野川台風並み」と注意喚起していたので、本来であれば河川氾濫の怖さと被害に備えるべきでした。

ところが、その数週間前の台風15号が千葉県にもたらした被害の多くが暴風によるものだったことで、バイアスがかかった。長時間かつ広範囲にわたる停電や断水、なぎ倒された鉄柱や、倒壊したゴルフ練習場の鉄柱に押しつぶされた民家といった映像や情報が知らず知らずにインプットされていたため、「暴風」への警戒ばかりがテレビでもSNSでも先行しました。

バイアスの一つである、「想起ヒューリスティック(利用可能性ヒューリスティ
ック、想起しやすい情報を優先して判断してしまうこと)」の罠にはまってしまったのです。

その結果、警報の出し遅れが相次ぎ、被害は拡大しました。

「心はバイアスから逃れられない」という本質的特徴を、人はもっている。であるからして、「空振り」を決しておそれてはいけないのです。

そして、「私たち」も、「思ったほどじゃなかったね。よかったよかった」と受け止めるマインドを鍛えなくてはいけないのです。

みなさんの意見もお聞かせください。

image by: Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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