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問題は自民の体質。杉田水脈議員の「差別発言」が止まらない理由

自民党の杉田水脈議員による「女性はいくらでもウソをつける」発言の問題は、本人が26日付けの自身のブログで発言そのものを強く否定。しかし、1日付けのブログでは一転して発言を認め、「嘘」の記述だったことへの謝罪と、言い訳色の滲む真意の説明及び不快な思いをした人へのお詫びを掲載し、事実確認がなされました。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんは、そんなお騒がせ議員の杉田氏の数ある「暴言」記事を朝日新聞から抽出。杉田氏の差別発言が止まない理由をあぶり出しています。

「差別発言」を連発する自民・杉田水脈議員は今までどう報じられてきたか?

きょうは《朝日》から。何と言っても、「杉田水脈」氏ですね。彼女についてどんなことが報じられてきたのか、検索の力を使って振り返ってみたいと思います。《朝日》3面掲載の記事。見出しと【セブンNEWS】第4項目の再掲から。

(3面)
杉田氏発言の有無明かさず
自民・下村氏が事情聴く

 

自民党の杉田水脈議員が「女性はいくらでもウソをつける」と発言したとされる問題で、同党の下村博文政調会長は杉田氏から事情を聴取。「真意が伝わるよう、より丁寧な説明が必要だ」と求め、口頭で注意したが、発言の有無など、聴取内容については公表せず。

 

9月25日の自民党内の非公開の会合(政調会の部会?)で、杉田氏が「女性はいくらでもウソをつける」と発言したとされる問題で政調会長の下村博文氏が杉田氏から話を聞いた。下村氏によれば、杉田氏は「女性蔑視を意図した発言はしていない」と釈明し、「改めて丁寧な説明をする」と話したという。

 

下村氏は、部会は「基本的に非公開とし、各人の発言は公にしないルールでやっている」として、言われるような発言があったかどうかも明らかにしなかった。

 

野党だけでなく、与党からも批判が相次ぎ、森山裕国対委員長は発言があったとすれば極めて遺憾と延べ、石破茂元幹事長も「女性の真摯な思いを傷付ける」と批判。

●uttiiの眼

杉田氏自身は、何も反省しておられないようで、「今後はブログでしっかり書いていきたい」と言っているようだ(その後、ブログで発言を認めて謝罪)。今回、石破氏はともかく、国対委員長や自民党の女性議員の間からも批判が出ており、何か、党としての処分に発展するのかしないのか。

それにしても、「女性はいくらでもウソがつける」などということを、当の女性が口にするのは、まるで、あの有名なパラドックス、「すべてのクレタ人は嘘つきだ…」のようだ。彼女は自覚しているだろうか。

関連記事など

《朝日》の「サイト内検索」で「杉田水脈」を検索すると、最も古いのは17年10月9日付で、自民党が発表した衆院選の公認候補のなかに「杉田水脈」の名前が含まれている。同11日付では、やはり選挙関連情報の中で、「元次世代の党衆院議員の杉田水脈氏」を、自民党が比例中国ブロックの単独最上位の17位に擁立、とある。そこから、杉田氏の暴言に関する記事が出てくるのは、2018年7月を待つ。

2018年7月23日付
同性カップルには「生産性がない」との主張を含む月刊誌への寄稿が問題になる。

批判はLGBT当事者、野党の各党からだけでなく、与党・公明党からもあった。自民党内からは稲田朋美氏の「党の方針に反する」との批判があり、石破茂氏などからも「人の気持ちを傷つけて、平然としているような自民党であってほしいと思っていない」との批判的発言。三重県伊賀市の岡本市長は「時代錯誤も甚だしく、あり得ない発言」と。自民党の二階幹事長だけは「人それぞれの人生観がある」と擁護した。

*その後、自民党の谷川とむ議員が「(同性愛は)趣味みたいなもの」と発言して問題になる。

2018年8月2日付
杉田水脈議員に対し、自民党が「問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現がある」として、杉田氏に今後注意するよう指導したとの党見解をホームページに掲載した。自民党が、議員の問題発言をめぐり、見解を公表するのは極めて異例だという。

*その後、安倍首相も杉田氏の発言に問題があるとの認識を示したりしたが、1人、二階幹事長だけは「こういうことはそんなに大げさに騒がないほうがいいんです。この程度の発言があったからと言って、帰国してからどうだってそんな話じゃありません」と訪問先の韓国で発言。LGBT団体の抗議活動が続き、抗議デモも起こるが自民党の甘い対応は、その本気度を疑われ続ける。抗議には障害者や難病患者も加わる。

*杉田発言に抗議して闘う必要があると考える人が増えてくる。

国文学研究資料館長のロバート・キャンベル東大名誉教授(60)は、ブログで自分が同性愛者であることを公表、「ふつうに『ここにいる』ことが言える社会になってほしい」と訴えた。杉田氏が、同性カップルを念頭に「子供を作らない、つまり『生産性』がない」と書いていることについては、「歯牙(しが)にかけるにすら値しない」と一蹴。

*その後、杉田氏の寄稿を掲載した「新潮45」が「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」とする特集の形で反論を掲載。これに対しては新潮社内部や作家からも批判が巻き起こり、9月、書店の中には新潮社の本を棚から撤去する店も出てきた。そして…。

2018年9月22日付
新潮社社長は「ある部分に関しては、あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられました」と、反論特集に対してコメント。

*このあと、新潮社を批判する内容の落書きが見つかる。本社のすぐ横に設置された新潮文庫の広告「Yonda?」のキャッチコピーに、「あのヘイト本、」の文字が書き加えられており、「あのヘイト本、Yonda(読んだ)?」と読めるようになっていた。

2018年9月25日付
同日、新潮社は「新潮45」の休刊を発表。

*2019年に入ると、自民党の他の議員の暴言によって杉田発言はむしろ目立たなくなる。

2019年5月22日付
麻生太郎「こどもを産まなかった方が問題」、塚田一郎国交副大臣「(道路事業で首相らの意向を)忖度した」、桜田義孝五輪相は自民党議員のパーティー席上で、「復興以上に大事」などと発言。自民党所属議員の失言が止まらない。

2019年7月13日付
参院選候補者へのアンケートで、同性婚の是非を尋ねた。回答した自民候補のうち反対派は36%。「賛成」もしくは「どちらかと言えば賛成」は併せて9%のみ。

*新たな「暴言」が浮上する。

2020年1月23日付
衆院代表質問で国民民主党の玉木雄一郎代表が選択的夫婦別姓に関する質問をした際、「それなら結婚しなくていい」という趣旨のヤジが飛んだとされる問題で、野党は衆院議院運営委員会で自民党の杉田水脈衆院議員の発言ではないかとして自民に確認を求めたと。

*この件で杉田議員は取材拒否。野党は議長に解明を要求。疑惑は高まったが、2月に入って「決着」する。

2020年2月5日付
衆院議院運営委員会の理事会で、発言者を特定せず、審議に影響す るような不規則発言は今後注意することで合意した。

*杉田氏は暴言とは別に、こんなところでも暴れている。

2020年3月3日付
政府が、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、イベントの自粛を呼びかけているなか、2月25日夜には、西村康稔経済再生相、北村誠吾地方創生相、竹本直一科学技術担当相の3閣僚が、自民党の杉田水脈(みお)衆院議員の政治資金パーティーに出席していたことが明らかに。

*そして今回の問題に直接つながる記事。

2020年8月20日付
ツイッターで自らを中傷する投稿に繰り返し「いいね」を押されて名誉を傷つけられたとして、性被害を訴えているジャーナリストの伊藤詩織氏(31歳)が、自民党の杉田水脈(みお)衆院議員に220万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。

*そして、9月25日、「女性はいくらでもウソを付く」発言

●uttiiの眼

議員になってからの3年を振り返るだけで、これだけの問題が噴出する議員も珍しい。同性カップルには「生産性がない」との発言、国会本会議場での「それなら結婚しなくていい」とのヤジ疑惑。そして元TBS社員で安倍氏に近い山口敬之氏から受けた性被害を訴え続ける伊藤詩織さんへの暴言を繰り返しリツイートした問題。

自民党内には批判する声もあるとは言え、基本的な支持層の中には伝統的な家族観から一歩も抜け出そうとしない保守層があり、杉田氏に重い処分も科さずに事実上放置している点からして、問題の根源は自民党の体質にこそあると言わなければならないだろう。攻撃されているのは、性的マイノリティーに止まらず、女性全般、そしてあらゆる社会的弱者だと理解しておく必要があると思われる。

image by:oasis2me / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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