中国を擁護か。「千人計画はデマ」というデマを流す日本学術会議

 

日本の学会が他国の軍事技術や侵略に寛容な理由

日本学術会議のメンバーに推薦される人物が、そのような国際状況を知らないはずがありません。「自分のまわりでは聞いたことはない」というのは、よほど危機感のない能天気な人物か、あるいは中国が無視するようなつまらない研究しかしていないということなのでしょう。どちらにしても、日本の科学技術を守り、発展させるような人物ではないということです。

あるいは「軍事研究をしない」と宣言している以上、たとえ軍事関係であっても、「軍事とは関係ない」という脳内変換が起こるのかもしれません。

私の新刊『親中派の崩壊』にも書きましたが、アメリカの国務省関連のシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は、2020年7月末に「日本における中国の影響力」という報告書を発表、そのなかで中国が世界各国で展開する孔子学院をスパイ活動の拠点だと示唆しています。

そのためアメリカでは孔子学院を閉鎖する動きが加速していますが、日本では全国で15校開設されており、ほとんど問題視されていません。これも、孔子学院をスパイ拠点だと考えることが「軍事研究」につながるということで、日本の学者や学会は「考えないようにしている」のではないかと思うのです。

だから日本の学者や学会は「他国によるスパイの危険性」「他国からの侵略」ということに思いが及ぶことがないのでしょう。たぶん彼らは、中国からミサイルから飛んできても「人工衛星ではないか」「一発なら誤射だろう」と考え、軍事行動だとは考えないようにするのではないでしょうか。軍事行動だとみなして中国の意図や戦略を考えることは軍事研究にあたりますから、「考えないようにする」わけです。

もっとも、日本にはスパイ防止法もないわけですから、学者のみならず政治家の怠慢も批判されるべきでしょう。

日本は戦後、GHQの公職追放によって、国立大学からマスコミのトップまで首がすげ替えられました。当然、東京裁判を支持するような人たちが社会の中心になったわけです。法曹界もアメリカ謹製の日本国憲法を敬うような学者ばかりになりました。

私も一時、大学で教える立場にいましたからわかるのですが、学会はムラ組織であり、代々、そこで通用してきた論理を弟子たちが継承し続けなくてはならず、異論を掲げるものはメインストリームから排除されます。だから憲法学者のほとんどが護憲論者なのです。

こうして戦後の各学会は東京裁判史観を代々受け継ぐかたちで既得権益化していったのです。渡部昇一氏は、このように日本の敗戦によって得た利益を既得権益化する者たちを「敗戦利得者」と呼びました。

日本学術会議をはじめとする日本の学会が日本の軍事技術には絶対協力しないと宣言し、戦前の日本を侵略国と定義したがる一方、他国の軍事技術や侵略に寛容なのは、そういうわけなのです。

【訂正箇所について】

  1. 当初の原稿では『「日本学術会議の幹部が北大総長室に押しかけて圧力をかけ、研究を辞退させたことも明らかになっています』としていましたが、そのソース元である奈良林直氏が、「日本学術会議の幹部が北大総長室に押しかけたという事実がなかった」として訂正されていますので、 『これを「軍事研究」と決めつけ、2017年3月24日付の「軍事的安全保障研究に関する声明」で批判、学術会議からの事実上の圧力で、北海道大学は研究を辞退せざるをえなかったことも明らかになっています』に訂正し、ソース元の文章へのリンクを張りました。
  2. 引用した甘利氏のブログを、甘利氏が『「千人計画」には積極的に協力しています』→ 『「千人計画」には間接的に協力しているように映ります』と修正したことを受け、引用文もそのように修正しました。また、本文も『 「千人計画」に協力しているのです』を『「千人計画」に実質的に協力しているといえます」と修正しました。

 

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image by: Hanonimas / CC BY 3.0

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年10月7日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。

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