キャリア値下げは格安スマホ潰し。国民を欺く菅政権の矛盾だらけ

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菅総理誕生と同時に示された「携帯電話料金の値下げ」への意欲に応えるように、ソフトバンクやauが動きを見せています。これを受けた武田総務大臣や古谷公正取引委員会委員長の発言が矛盾だらけだと指摘するのは、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんです。石川さんは、昨年から続く政府の政策が格安スマホ事業者潰しに繋がることを理解していないと、間違った政策への検証を求めています。

料金プランはシンプルかそれとも多様な選択肢か――武田総務相の発言から見える「矛盾」

値下げ議論に関連して、武田良太総務相や公正取引委員会の古谷一之委員長などの発言が注目を浴びている。しかし、それらのコメントを読む限り「本当に問題を理解できているのか」と心配になってくる。発言の主旨が一貫しておらず矛盾点が多々見られるのだ。

例えば武田良太総務相は、10月9日の記者会見において国民からヒアリングの感想を聞かれ「プランが複雑すぎてよく分からないという方々が多くおられました」とコメントしている。すなわち、プランを減らしシンプルな方向性を目指していきたいという現れなのだろう。

しかし、10月16日の記者会見でソフトバンクの値下げ報道について聞かれた武田総務相は、「魅力的な料金・サービスの選択肢が広く提供されることは、良いことにつながるのではないかと思っております」と回答している。「プランが複雑でわからない」と指摘していながら、料金プランの選択肢が広く提供されることを歓迎してしまっている。全くもって、言っていることが逆ではないか。

さらに「低い容量のプランにつきましても、格安スマホ事業者が、安い料金プランの選択肢をどんどん出してきているので、今後期待していきたいと考えております」としているが、今回のようにキャリアに値下げを迫れば、格安スマホ事業者は廃業に追い込まれていくことに気がついていないのか。

公正取引委員会の古谷一之委員長は「格安スマホのシェアがまだまだ広がらない」と言い「接続料や中古市場の問題があるかもしれない」と指摘した。

中古市場に関しては、昨年10月の改正電気通信事業法で完全分離プランが当たり前となり、スマホが売れなくなった。結果として、中古市場で使用済みスマホの流通量が減るのは間違いない。そもそも、iPhone SEの新品が5万円で買えるようになったことを考えると、あえて中古スマホを選ぶ理由がなくなりつつある。

本来であれば、スマホに大幅な割引をつければ買い替えが促進され、結果として中古スマホ市場が拡大するはずだ。しかし、割引がなくなったことで新品の値段が下落。わざわざ中古スマホを買わなくても、新品を買えばよくなった。

武田総務省も古谷委員長も、きちんと現状を理解し、間違った政策には修正を施し、健全な競争環境を作り出すことはできるのか。この数年、総務省が実施した政策がきちんと機能していたかの検証をせずに、すぐに官邸主導で値下げが実施されるようなことがあれば総務省における競争政策の存在価値を改めて見直す必要も出てきそうだ。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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