ニューヨーカーにとって「住まい」とは?終の棲家の考えなしの衝撃

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長引く新型コロナウイルスパンデミックの影響で、上がり続けていたニューヨークマンハッタンの不動産価格にも変化が生じてきているようです。メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』著者でニューヨークの邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋克明さんが、同じアパートメントの住人たちの様子とともに、日本人とは違うニューヨーカーの「住まい」に対する感覚について伝えています。

最新ニューヨーク事情「ニューヨークの物件価格」

ここ最近、我が家、コーアップ(Co-op)のメンバー、つまり同じビルの住人に、エレベーターやロビーで会う度にする会話は、「投資」のことばかり。

日本ではそう馴染みがないと思いますが、12年前に無理して購入したニューヨークのど真ん中に建つアパートメントは、住居人が株を所有するというコーアップ方式。コーアップビルの管理他メンテナンスに関することすべてはボードメンバーと呼ばれる住居人の役員が開く会合で協議して決まります。つまりは全員が物件に対するストックホルダー(株主)のようなもの。

結局、ニューヨーカーは住まいを完全に「投資」と割り切っているということです。ある程度の年齢までは、マンハッタンの真ん中に住み、老後はその家を売る、もしくは貸すなどして、そのお金で空気の綺麗な郊外に住む。多くのニューヨーカーがそう割り切っています。死ぬまでの終の住処として、一軒家のローンを組む日本とは根本から違う。彼らは常に、ネット上の自分の家の物件価格とにらめっこして、売り時には、躊躇せず、売る。住居を転々とします。

その背景は、マンハッタンの不動産価格は常に右肩上がり、という事実があります。確かに20年前のあの同時多発テロの時ですら、一瞬下がったけれど、すぐにまた上がり始めた。結局、この街は腐ってもニューヨーク。世界のどこかしらから、人はいつの時代でも集まってきます。80年代、日本人がこの街の不動産を買い漁ったように。2000年代以降、中国人が押し寄せてきたように。そんなニューヨークでも、さすがに今回のコロナ禍以降、物件価格が下がり始めてきました。

しかも、今日エレベーターで同乗した白人のおばさんによると、「あなた、きいた!? 2ブロック先に、ホームレスのシェルターが新たにできるそうよ!ここ、マリーヒルなのに!!」彼女はそう言ったあと、ぐったりした顔で、エレベーターの壁にもたれかかりました。

マリーヒルとはこの辺り一帯、エリアの総称。いちおう高級住宅地、の代名詞です。時代も移り変わり、とうとう路上生活者を保護するシェルターが、近所に新しく出来るという情報です。当然、地価は下がります。このあたりに住みたい人が減り、コーアップの価格も下がる。

でも、まぁ、助かる路上生活者もいるしなぁ…僕はといえば、正直、もう、そのあたりまでは気にしていません。キリがない。努力ではどうしようもない領域だからです。極端にいえば、明日第三次世界大戦が始まり、マンハッタンがその舞台にならないとは限らない。そうなったら、地価が上がるとか下がるとかの問題ですらなくなる。少し極端な考え方だけど。あとは、ニューヨーカーほど、住居を投資の対象と見ていないのかもしれません。

それに、零細企業の外国人経営者としては、自宅のローンより、掛け捨てのオフィスのレントの方がよっぽど痛い。地価が上がるとか下がるとか、もういちいち考える余裕がないのが本音です。そんなことより、近所のコーヒーショップでアイスコーヒー2つにクロワッサン2つ買ったら20ドル(日本円で約2100円)、の方がよっぽどムカつくよ。これ、ニューヨークの相場なんです(笑)アホみたいっしょw

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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