ヒットは偶然にあらず。『鬼滅の刃』が設定に大正時代を選んだ深い訳

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 劇場版が公開から10日間で興行収入100億円を突破し、社会現象ともなっている『鬼滅の刃』。この作品の舞台は大正時代の日本なのですが、なぜこの時代設定が選ばれたのでしょうか? 今回の無料メルマガ『幸せなセレブになる恋愛成功変身術』では、著者のマキトさんが大人気『鬼滅』の設定を深く掘り下げて、その人気の秘密に迫ります。

『鬼滅の刃』はなぜ大正時代が舞台なのか?

『鬼滅の刃』において、鬼殺隊は刀で鬼と戦う設定になっています。洋装に帯刀のいで立ちから、モデルが新撰組であることは明らかですしかし鬼滅の舞台は、なぜか大正時代となっています。時代劇ならぬ「近代劇」です。

明治9年の廃刀令からすでに1世代以上が経過しており、サムライブレードの時代はとっくに終わっています。鬼殺隊は法的にはあくまで民間人なので、帯刀して道を歩いていたらタイホされてしまうはずですw 素直に考えたら、舞台を帯刀が許されている維新以前に設定しなければおかしいのです(・_・;?

そもそも近代劇であるならば、刀ではなく銃で戦うのが自然です。「鬼滅の銃弾」ですね。時代考証を抜きにしても刀の戦闘力は、飛び道具だけでなく槍や薙刀にも劣ります。リーチが短く重量にも欠けるため、鎧を着た相手にはまず通用しません。刃こぼれするだけです。そのため古来から、刀剣が戦場の主役として活躍した事例はありません。

それでも強引に刀で鬼と戦う設定にしたのは、それだけ剣士の人気が高いからです。「剣豪」という日本語はあっても「銃豪」や「槍豪」はありませんよね? この傾向は万国共通で、『スターウォーズ』シリーズでもジェダイの騎士はライトセイバーで戦います

古来、剣は神聖な武器と考えられてきました。弓矢や鉄砲などの飛び道具は先制攻撃にも不意打ちにも向いていますが、それだけに「男らしくない」とも考えられていました。要するに弓矢で闇討ちに成功したとしても、強い男としてメンズカーストが上がることはなく、むしろ卑怯者扱いされるリスクもありました。また飛び道具には、矢弾が尽きた場合、戦闘力がゼロになってしまうというリアルな欠点もあります。

槍や薙刀は確かに長大で強力な武器ですが、それだけに日常的に携行するには向きません。いくら槍の達人でも、手元に槍がない時(つまり、ほとんどの時間)襲いかかられたら何もできないのです。

伝統社会において常に携行できるサイズの刀剣は最も身近な護身具であり、その扱いに習熟するだけの価値は十分にありました。それゆえあらゆる武芸の中でも剣技は特別扱いされ、その達人はヒーローになったと考えられます。エンタメとしては、歴史考証を犠牲にしてでも鬼と剣で戦う設定にするだけの価値は十分にあるわけです。

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