インド不参加、台湾は排除。中国主導の「RCEP」が日本に及ぼす災禍

 

もうひとつ、台湾にとってTPPに希望が持てるのは、アメリカでバイデン大統領が誕生した場合、アメリカがTPPに復帰する可能性もあります。

もともとTPPに関してはオバマ大統領がかなり積極的に推進してきました。それがトランプ大統領になって一転して、TPPからの離脱が宣言されたわけです。再び民主党政権に戻れば、アメリカのTPP復帰もありえるでしょう。そこに台湾が参加すれば、経済的な安全保障にもなります。つまり日米と台湾が連携して、中国抜きの経済圏をつくりあげるということです。

とはいえ、バイデン氏はオバマ・ケアの復活については意気込んでいますが、TPPや対中政策については、未決、未定のままです。バイデン新政権は中国に対して協調路線をとるのかどうか、一抹の不安が台湾でも払拭できていません。

加えて、トランプ政権も大統領選挙後に、中国へのけん制姿勢をさらに強めています。トランプ政権は、11月20日に台湾との新たな経済対話をワシントンで開催すると発表しました。もちろん中国は猛反発しています。

トランプ政権 20日に台湾との新たな経済対話を開催へ

日本のニュースでも、中国の台湾への武力行使についてはすでに「準備終了」の段階にあるとも伝えられています。しかし、北京の冬季オリンピックも控えているので、それが終わるまでは北京政府は軽挙妄動しないという説もあります。

台湾は400年前のオランダ人時代から、経済をはじめ各分野で明の政府と対立し、今日もまた中華人民共和国政府と対立関係にあります。ここ400年近く、台湾は中国大陸とつねに対立しつづけてきたのです。その対立関係は、イギリスとフランスの百年戦争を連想させるほどです。中国の改革開放以後、中国に進出した台湾企業は、多くの技術を窃取されてしまいました。

一方、日本はRCEP協定に署名し、参加を表明していますが、中国に対する警戒心をもっと高める必要があります。

たとえば、同じくRCEP協定に署名したオーストラリアでは、安全保障情報局(ASIO)が、「敵対国がアメリカのビジネス特化型SNSであるLinkedInなどを利用して機密情報を入手しようとしており、インターネット上でスパイをヘッドハンティングしている」と警告しました。

ASIOは敵国の国名は明かさなかったものの、中国やロシアを関連付けているそうです。ASIOの報告書に寄ると、現在のオーストラリアには冷戦時代よりも多くの外国スパイが存在し、外国政府はオーストラリアの能力、研究、技術、内政・外交政策に関する情報を求めているといいます。

オーストラリアにそれほどのスパイがいるのであれば、日本にいないはずがありません。日本学術会議にしても、こうした海外スパイのターゲットになる可能性が高いことは、言うまでもありません。

日本では「自由貿易」というと、経済だけの分野だと考えがちですが、安全保障と密接な関係にあることは言うまでもありません。知的財産権も安全保障とは不可分です。それゆえに、情報戦に対する備えも必要なのです。

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