【サーチ&リサーチ】
《東京》の過去記事検索で引くと、「除斥期間」は2016年3月から2020年8月までに、21件の記事がヒットした。「除斥期間」の問題に逢着するのは旧優生保護法の被害者にとどまらない。様々な立場の人に降りかかる問題であることが分かる。
2016年3月30日付
ハンセン病の強制隔離政策で家族も深刻な偏見や差別を受けたとして、除斥期間内ギリギリで提訴した旨の記事。
2016年9月9日付
「上智大生刺殺事件」では、犯人が捕まらないまま除斥期間が過ぎてしまい、遺族らは「国が賠償金を立て替え、後で犯人に請求する制度の導入を求めている」と。
2017年11月25日付
「海外在住の被爆者と遺族が「被爆者援護法の適用外とされたのは違法」として国に損害賠償を求めている集団訴訟で、国が昨年9月以降、被爆者の死後20年が経過した場合は民法で請求権が消える「除斥期間」に当たるとして、一部の遺族との和解に応じない方向で手続きを進めていることが25日、分かった。原告側は「突然、こうした主張を始めた国の姿勢には反省も誠実さも感じられない」と反発している」と伝えている。
*その他、「B型肝炎」、「ビキニ被爆者」、「大阪小六女児焼死事件」、「高崎一家殺害事件」、「布川事件」、「韓国人被爆者遺族」などでも、除斥期間が裁判などの展開に重要な影響を及ぼしている。
●uttiiの眼
「除斥期間」はもともと明文規定が存在せず、ただ解釈上使われてきた概念。今年4月施行の改正民法では不法行為の損害賠償請求権に関して、次のように明文で規定された。
第724条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
2 不法行為の時から20年間行使しないとき。
この後段の規定により、不法行為による損害賠償の請求権は、「除斥期間」ではなく、「時効」によって消滅すると規定され、柔軟な裁判闘争が可能になった。時効なら、時の進行を起算点に戻したり、相手の時効の主張に対して対抗したりすることができる。もっと前に改正されていれば…という気がする。
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