竹中平蔵よ大罪を償え。元国税が暴く賃下げと非正規、一億総貧困化のカラクリ

 

経済学者としてのポンコツさ

この竹中平蔵氏の労働分配率だけを抽出して日本経済を分析するやり方は、明らかに雑なものの見方だったのです。そもそも日本人の賃金はまだ欧米に比べて安く、バブル期であっても欧米には届いていませんでした。

日本企業の利益率自体が欧米企業よりも低かったので、労働分配率が高くなるのは当たり前だったのです。だから、賃金を減らすのではなく、日本企業の利益率を上げる方法を考えなくてはならなかったはずです。

日本企業は、それまで欧米よりも安い商品を大量につくることで貿易黒字を稼いでいました。つまり国家的な「薄利多売」であり、今の中国のようなビジネスモデルだったのです。

しかし貿易黒字が溜まり物価が上がり賃金が上昇すれば、このビジネスモデルは成り立ちません。だから、日本はこのビジネスモデルを変え、欧米のような利益率の高いビジネスへとシフトすることが先決だったのです。

そして、日本では労働者の権利が欧米ほどきちんと守られておらず、サービス残業や長時間労働は当たり前でした。現在でも、日本はサービス残業や長時間労働などでは、世界最悪のレベルなのです。

そういう日本の労使関係において、国が企業に対して「賃金を下げてもいい」という方針を打ち出せば、賃金の低下に歯止めがかからなくなることは目に見えていました。

欧米ならば、労働者の権利が厳重に守られているので、企業の論理だけで賃金を下げることはできません。欧米は厳しい競争社会のように見えますが、国民や労働者の権利は、何よりも大事にされてきたのです。

あの自由の国のアメリカでさえ、日本の中央銀行にあたるFRBに「雇用を守る義務」を課しているほどなのです。つまり失業が増えないように、FRBが努力する義務を負っているのです。

またアメリカの株式市場では、労働環境が悪化したり、労働者の賃金が下がったりすれば、株価が下がる傾向にあります。つまり、「労働者の生活が守られないと景気はよくならない」という意識が、国全体に浸透しているのです。

竹中氏はそういう欧米の「雇用を大事にする文化」「労働者の生活を大事にする文化」には、目を向けることなく、ただただ「株主を優先する文化」だけを強引に日本に導入しようとしたのです。

綿密な分析をせずに、ただただ日本は労働分配率が高いから下げろという、あまりに雑で乱暴な経済政策を行なったのです。

またサラリーマンに対して「賃金が下がってもその分株で稼げばいい」という主張も明らかに現実から逸脱したものでした。もともとそれほど高くなかった賃金がさらに下げられれば、株式投資に回す余裕などはありません。

だからほとんどの国民は、この20年間「賃金が下がっただけ」「生活が苦しくなっただけ」ということになってしまったのです。

よく税金を無駄にする政治家のことを「血税を無駄にする」というような言い方をされることがありますが、竹中氏の場合は、そんな生ぬるい言葉では表現しきれません。血税を無駄にしているのではなく、国民の血を吸っているに等しいのではないでしょうか?

初月無料のお試し購読はこちら

 

print

  • 竹中平蔵よ大罪を償え。元国税が暴く賃下げと非正規、一億総貧困化のカラクリ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け