今年11月、ユニクロが世界的なファッションデザイナーのジル・サンダー氏とのコラボ商品を9年ぶりに復活させると、一部の店舗では客が殺到するなど大きな話題となりました。今回のメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』では、これまでも様々なコラボ商品をヒットさせてきたユニクロの売れる仕組みの創り方をビジネスモデルとターゲット設定から探ります。著者の理央周さんがたどり着いたユニクロのコラボが当たる最大の理由とはなんなのでしょうか。
ユニクロのコラボ商品は、なぜ当たるのか?売れる仕組みの創り方
先日発売になった、ユニクロのコラボ商品、行列ができたり、ニュースで取り上げられたりと、大きな話題になりました。今号では、ユニクロとデザイナーのジル・サンダー氏による、コラボコレクション「+J」について、そのマーケティング的な意味、について、考えていきましょう。
ユニクロのコラボ商品
今回の、ジル・サンダーとのコラボ商品は、世界各国の店舗とオンラインストアで発売されたとのことです。このコラボは、2009から2011年間にも、5シーズン継続して、コレクションを発表していました。今回、実に9年ぶりの販売となったので、久しぶりに買いたいと思う人が多かったようで、かなり大きな話題になりました。
アイテムは、メンズだとジャケットやチノパン、レディースだと、短い丈のダウンジャケットや、シャツなどの商品が出たそうです。私も、新宿のビックロに立ち寄って、売り場を見てきましたが、いつもより、少しクールな感じのディスプレイで、20代前半くらいをターゲットにしている、といったイメージです。
デザイナーのジルサンダー氏は、ドイツ出身の方で、1968年に自分のブランドを出したそうですから、もう50年以上のデザイナーとしてのキャリアがあります。WWDジャパンによると、ジル・サンダー氏の服の特徴は、色使いシルエットが、かなりシンプルでスッキリした感じのデザインとのこと。
ここのところ、できる限りいらないものを省いていく、「ミニマリスト」というライフスタイルが流行っていますが、そのようなイメージのデザインが多いようです。
ユニクロのビジネスモデル~ZARAとの比較
なぜ、ユニクロのコラボ商品がヒットしたかを考える前に、ユニクロのビジネスモデルについて、おさらいをしておきましょう。ユニクロは、大量に生産して、業界の標準よりも低い価格で販売する、「コストリーダーシップ」という戦略をとっています。
たくさん仕入れるので、原材料をはじめとして、一つ一つにかかるコストを抑えることができます。対照的に、差別化戦略をとっているZARAは、デパートのクオリティのデザイン性高い商品を、手が届く価格で販売しています。
なので、ユニクロをZARAと比べてみると、多く生産する分、デザインはシンプルで、色使いもオーソドックスなものが多いのが特徴です。なので、着回しがきいたりします。また、手に届く価格なのに、服の品質はとても良いと言えます。肌触りもよいし、長持ちもするものが多いですよね。
この辺りは、購買層にも影響を与えます。たとえば、同じ2~30代の女性でも、ユニクロファンは、堅実派で賢い消費をするタイプ、一方のZARAファンは、ファッションやメイクに、興味を持つタイプが多いとのことです。どちらも、戦略が明快なので、お客様から見ても、分かりやすく、「自分が買うならこっちだ」と、買う理由になります。
なぜ、このコラボはこれほどの話題になったのか?
ここのところ、アパレル産業が苦戦する中、このような話題になる理由について、考えてみたいと思います。このいいものを業界の通例よりも安く売る戦略が、今の時代に増えている、「いいものをしっかりと選んで、長く着たい」という人たちに、マッチしたのだと言えます。
これまでも、少年ジャンプのマンガ・アニメとのコラボTシャツや、海外ではマリメッコというフィンランドのブランドとのコラボ、中国ではKAWS(カウズ)というニューヨークのグラフィックデザイナーとコラボした商品を販売し、ネット販売含めて売り切れが続出したという、多くのコラボ商品を出しています。
ユニクロとしては、自社で一からデザインするというよりも、著名デザイナーとのコラボで、そのブランドのファンにも買ってもらえる、というメリットがあるため、コラボ商品を開発します。ユニクロのコラボが当たる最大の理由は、どのコラボ商品もターゲットを明確にして、需要が大きい市場に的確に商品を当てているところです。
この、ブランド同士のコラボの動きは、アディダスや、ルイビトンとスープリームなど、スポーツやラグジュアリーブランドにも広がっています。垣根を超えたコラボでの商品を販売すると、もちろん、目新しい、という意味で、ニュースになることも企業にとってはメリットですが、お互いの顧客のうち、相手をしなかった顧客を、自社ブランドの試し買いに引き込むことができます。ただその分、既存顧客のうち、愛着が高い顧客が離れてしまう、というリスクも存在するので、注意が必要です。
いいものを作れば売れる、という時代は、とうに終わっています。そんな中での、新しいチャレンジ、期待できますね。
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