この危機的状況下でも繁華街に繰り出す意欲が旺盛な人々は、マスクさえつけていれば大丈夫と思っているかもしれない。しかし、筆者が街ですれ違う人々のなかには、マスクを顎に下げたり、鼻をむき出しにしている姿が散見される。マスクの使い方についての意識が低い人は意外に多いのだ。人の移動、接触を増やす政策を続けるかぎり、三密を避けるといっても限界がある。
しかし、菅首相の「GoTo」への執着は尋常ではない。最も感染者が多いにもかかわらず東京都はキャンペーンの効果を維持するために外せないということらしく、責任を押しつけあっていた小池都知事と妙な手打ちに及んだ。
「65歳以上の高齢者と基礎疾患のある人を対象に、都内を発着する旅行の利用自粛を求める」という中途半端な内容だ。
そもそも、リスクの高いそういう人たちは、言われなくても自重するだろう。若者や働き盛りの人はどうぞお出かけ下さい、どんどん来てくださいというのでは、なんにもならない。
「GoToトラベル」は、すでに5,000万人泊をはるかにこえる人々が利用した“民族大移動”事業である。菅首相がそれを感染拡大の大きな要因とはみていないことに疑問を持ったのであろう、東大の研究チームが15~79歳の男女約2万8,000人を対象に8月末から9月末、インターネット上で過去1カ月以内に嗅覚・味覚の異常などコロナ特有の症状があったかどうかを調べた。
すると、トラベル利用者の有症率が利用しなかった人の2倍近く高かったという。むろんこれで「GoTo」がコロナ拡大の主要因と決めつけるわけにはいかないが、一つの参考になるのは確かだ。
菅首相は現実を直視すべきではないか。「GoTo」と感染防止が、並び立つ道理がない。道理のないことをする政権には自滅への道が待っている。
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