支持率急落の自業自得。感染拡げた菅政権がGoToする自滅への道

 

府知事と市長が都構想の住民投票にかまけていた大阪などは、すでに医療崩壊状態といっていい。コロナ重症患者用のベッドがほぼ満床で、医療スタッフが不足し、一般重症患者の救急受け入れもままならないという。

たまらず「赤信号」をともした大阪府の対応について、「残念ながら、赤信号が点灯するのは遅すぎたと言わざるを得ない」(朝日新聞より)と茂松茂人・大阪府医師会会長が憤慨するのも、もっともだ。

京大の山中伸弥教授は米国での拠点を置くカリフォルニア州と大阪を比較し、8月から「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」サイトで警鐘を鳴らしていた。

カリフォルニア州は人口約3,700万人ですが、これまでに50万人以上が新型コロナウイルスに感染しています。カリフォルニア州は科学的データに基づいた対ウイルス政策をとっています。過去2週間の人口10万人当たりの新規感染者数が100名以上もしくは過去2週間の人口10万人当たりの新規感染者数が25以上で、かつ過去1週間のPCR検査の陽性率が8%以上を満たしたCounty(郡)では、厳しい経済行動制限をとっています。大阪府は過去2週間の人口10万人当たりの感染者数28.92名、過去1週間の検査陽性率9.3%と基準を上回っています。

大阪は感染者が世界一多いアメリカのモニタリング基準を上回る深刻な状況だと山中教授は指摘し、「現在の限定的な対策で乗り切ることができるのか心配です」と、政府や大阪府の姿勢に疑念を呈した。

この記事が投稿されたのは8月13日。このころ日本はといえば、しっかり「GoToトラベル」を進めていたのである。

もともとこのキャンペーンはコロナ感染がおさまったあとの景気対策として浮上したもので、当初は8月中旬のスタートを予定していたが、当時の菅官房長官は、全国旅行業協会会長でもある二階幹事長とはかって開始日を7月22日に前倒しさせ、旅に出よう、食事に行こうと旗を振ってきたのだ。

もとより、急激に落ち込んだ経済の立て直しに躍起となる気持ちは誰もが共有するところだ。ただ、キャンペーンのタイミングがあまりにも悪い。

まず政府は全力をあげて、広汎な検査体制を拡充し、隠れた感染者の連鎖をできる限り広げないようにすべきであった。それと同時に、爆発的流行の恐れがある冬場にそなえて、第一波、第二波で疲弊しきった医療現場の再構築に最大限の予算を投入すべきだった。

そうした備えのないまま発せられた「GoTo」が、どのような結果をもたらすのか、優秀な官僚にわからぬはずがない。菅首相に反対意見を具申しようものなら左遷の恐れがあるため、固く口を閉ざすのだ。

一時的に、大手旅行代理店や高級ホテル、その関連業界が潤っても、人々の大移動によって、さらに収束が見通せなくなった。

旭川の病院クラスターの惨状は言うに及ばず、全国各地で、医療機関が悲鳴をあげている。いま無理して「GoTo」を継続して、経済にプラスに働くとは思えない。

冬はこの先まだ長い。これまで政権に遠慮がちだった医療専門家の声がここへきて厳しさを増し、「GoToトラベルを一時停止すべきだ」との声が高まっている。

限界ぎりぎりで仕事を続けている医療現場のスタッフは誰しも「政府は何をやってるんだ」と叫びたい気分に違いない。今はハンマーを強く打ちおろして、緩んだ人々の気を引き締め、感染拡大を止めることに傾注すべき時だ。すみやかに「GoTo」を一部ではなく、全国一律で一時ストップするべきだ。

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