命より利権。新型コロナ禍の医療崩壊と精神病院の「意外な関係」

 

日本医療のいびつな構造

日本の医療というのは、実は非常にいびつな構造になっています。

あまり知られていませんが、日本は異常に病院の数が多いのです。日本には9,000近くの病院、診療所があり、断トツの世界一なのです。世界第2位はアメリカですが6,000ちょっとしかありません。アメリカは日本の2倍以上の人口を持つので、これは異常値です。日本の人口100万人あたりの病院数は約67です。欧米の先進国の場合、もっとも多いフランスでも約52であり、アメリカなどは18しかありません。つまり人口割合でみると日本はアメリカの約3倍の病院があるのです。

また病院が多いという事はもちろん病床数も多いです。先進国の中で病床数でも、日本は断トツで多いのです。

その一方で、集中治療室は異常に少ないのです。以下が、主な先進国の人口10万人あたりのICU(集中治療室)の数です。

アメリカ 34.7
ドイツ  29.2
イタリア 12.5
フランス 11.6
韓国   10.6
スペイン  9.7
日本    7.3
イギリス  6.6

 

(OECDデータより)

日本は、韓国はおろか春先に大量の死者を出したスペインよりも少ないのです。OECDの加盟国の中では下から2番目という低さです。

つまり、病床数は多いのに集中治療室は少ない、だから新型コロナの重症者が増えると医療崩壊してしまうということなのです。では、なぜ日本では集中治療室が少ないのでしょうか?

その答えを探る時、日本医療の闇に突き当たるのです。

実は日本の医療というのは「いびつなシステム」になっています。「いびつなシステム」を具体的に言えば、

  • 開業医が異常に多いこと
  • 精神病院が異常に多いこと

です。

日本の医療費の多くが、開業医と精神病院に割かれているために、本当に必要な場所に医療費が賄われていないのです。だから、集中治療室も足りないし、PCR検査体制も整っていなかったのです。そして一部の医療関係者だけが多額の収入を得ることができ、ほかの大半の医療関係者にはなかなか回されないという状態になっているのです。

医者には大きく分けて、「開業医」と「勤務医」の二種類があります。日本の場合は開業医の数が異常に多く、全体の3割にも達するのです。また病院の9割は民間病院であり、その大半が開業医なのです。しかも民間病院には事実上の世襲制になっているところも多く、「開業医の子供は医者になる」ということが半ば定型化しています。

だから日本ではこれほど病院が多いにもかかわらず、国公立病院が異常に少ないということになっているのです。国公立病院は日本の病床数の20%程度しかないのです。先進諸国では、病床の大半が国公立病院だというのに、です。

そして、民間病院というのは、手間がかかる上にリスクの多い重症患者などはあまり受け入れたがりません。だから民間病院では集中治療室などはあまり設置されていません。そのため、日本では集中治療室が異常に少ないという状況に陥っているのです。

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