北朝鮮としてみれば、制裁緩和を一刻でも早く引き出したいのだが、新兵器を振りかざして武力挑発をさせようとするならば、さらなる制裁強化を招くことは必至である。
にもかかわらず、金正恩政権がそのような事態をもたらすことを想定した上での決定だとしたら…、北朝鮮の人民はたまったものではない。
党大会中に中国の習近平国家主席が祝電を寄せ、中朝両国の関係発展は「党・政府の確固不動な方針」と述べ、今後とも北朝鮮への支援を続けることを示唆した。金正恩政権は中国の力に頼り、当面の経済難を乗り切る魂胆なのか。
1月18日に中国税関総署は北朝鮮との昨年の貿易総額は前年比80.7パーセント減の5億3906万ドルだったと発表した。
この貿易額は過去20年間で最低の数字であるが、北朝鮮が新型コロナ対策で国境を封鎖した結果によるもので、昨年12月の貿易総額は500万ドルであった。
これは中朝貿易総額が公表され始めた1988年以来、最低だった昨年11月よりは増加したものの、前年同月比では98.2パーセント減という有様であった。
北朝鮮では中朝国境貿易が遮断され、農民市場での生活用品の不足と生活難によって住民の不平不満が膨らんでいるという。
中朝国境で密輸を生業としている朝鮮族の業者は「北朝鮮から調味料類の依頼が多い」とのことだが、この寒空の下で軍事パレードを強行したり、1月17日に開催された最高人民会議では厳しい経済難の中でも、今年の国防予算に歳出の15.9パーセントを充てるなど、昨年と同水準を維持。昨年の国防事業に関し「核戦略を軸とする自衛的国防力を質・量的に強化した」と評価したとのこと。
金正恩政権からは「非核化」の言葉は消えてしまった。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)
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