踏みにじられた「内縁の妻」への遺言
節子さんが入居中の施設は、終身の一時金方式です。節子さんが入居している間、追加の費用は原則、発生しないので一成さんの財産がなくても金銭的に困窮することはないでしょう。しかし、一成さんが最後の力を振り絞って残した遺言です。筆者は生前、一成さんの気持ちを直接お聞きました。しかし、生前の人間関係によって「(内縁の)妻が困らないように」という一成さんの遺志が踏みにじられることになるとは……。
「無理が通れば道理は引っ込む」という悲劇を目の当りにし、自分の力が及ばなかったことを悔やむばかりです。
ここまで、遺言が守られなかったケースについて見てきました。執行人の存在は極めて重要です。相続時に反対者が現れることを想定し、毅然とした態度で遺産協議に臨めるような人に執行人を任せなければなりません。
もちろん、遺言の中身も大事です。一方で執行人として適任かどうかを総合的に判断した上で「誰に任せるのか」を慎重に検討してください。
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