何ひとつ説明せぬ菅政権の異常事態。日本の政治風土を破壊した真犯人

 

この中で、製造業を放棄する勇気は自民党にはありそうもありません。GDPが半減するだけでなく、仮に金融、バイオ、コンピュータといった知的産業にシフトするとなると、教育から文化、価値観などの大革命(英語公用語化を含む)が必要となり、自民党政治家の想像力、実行力では追いつかない話だからです。

そこで、恐らく現在の国策としては、この3つをミックスすることになっているのだと思われます。ある程度は原発を稼働させる。その間に、できるだけ代替エネルギーを調達する。その間に、支持者が驚かない範囲で知的産業へのシフトを図るという考え方です。

ですが、原発稼働は世論が許さないし、代替エネといっても、風力や太陽はどんなに頑張っても蓄電池が必要、また地熱は火山が観光資源なのでムリということで、「せっぱ詰まった中で」の選択として「水素」が出てきたのだと思います。

そして、この4月に入ったあたりから、実は水素の調達はオーストラリアとの共同でやっており、岩谷産業などが主導して「水素サプライチェーン構想」というのをやっている、その全貌が公開されるようになってきました。

私は、エナジー・ミックスをやって、排出ガスゼロに持って行くのは当然と思いますが、この「水素サプライチェーン」という考え方には疑問を持っています。技術的に低品位の「褐炭」から水素を取り出す研究をするのは良いことです。オーストラリアで進めるのもいいでしょう。

ですが、問題は水素の生成にあたって出てくる大量の二酸化炭素を、オーストラリアで地層処分するという構想です。まず、二酸化炭素は、使用済み核燃料などと違って半減期というのがありません。ですから、保管は永久になります。百歩譲って、相手が良いというのなら豪州の地下に地層処分をするのも良いかもしれません。

ですが、本格稼働がされて、二酸化炭素の処分が永久、大量となると話が別です。私は、豪州政府がそんな超長期、超大規模な二酸化炭素の地層処分などという話に「永久コミットする」とはどうしても思えないのです。第一に、資源のない他国に代わって、二酸化炭素を抱え込むということが、永久に政治的に成り立つわけがありません。第二に、そこをカネで越えるということになると、天文学的な資金が必要になります。豪州は潤っても、日本の経済力が支えられるのかという問題があります。第三に、二酸化炭素の地層処分というのは、地球への負荷になるわけで、排出権と同様に処分する権利というものが今後は高騰する可能性もあるわけです。

ですから、このプロジェクトに関しては、悪いアイディアではないと思うものの、国策として大規模に傾斜するのはリスクが大きすぎると思うのです。その辺りについて、どう考えても情報公開が少なすぎます。もっともっとオープンな議論をしないといけないのですが、政府としては、世論は感情的に流されるので、そもそも「1+1=1」だとか「1+1=3」だというようなことを言ってくる、だから「マトモに説明しても分かってもらえない」として、サザエのように身を潜めている感じがあります。

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