何ひとつ説明せぬ菅政権の異常事態。日本の政治風土を破壊した真犯人

 

2点目は、これもエネルギー政策の関係ですが「どうして今、日本では福島第一のトリチウム水の放出を急ぐのか?」という問題があります。勿論、海洋放出をしなくては、福島第一の汚染水タンクはそろそろ増設が限界に近づいています。ですから放出が必要なのは分かります。

ですが、安倍政権はダンマリを決め込んでいて、どうして菅政権は踏み切ることができているのか、どうも政治的に良く分からないのです。確かに、水素プロジェクトが、決して安定的な話ではない中で、日本の製造業をある程度は続けて行くためには、原発再稼働は避けて通れません。そのためにも、福島第一の廃炉は粛々と進めなくてはならず、そうなるとディストピア映画のような、あの汚染水タンクの林立は止めたい、それは分かります。

それはそうなのですが、それでも何故、今なのでしょう?これも憶測を重ねるしかありません。

1つは、安倍政権がどうしても嫌がって先送りしていたという説です。例えばですが、前総理に「こだわり」がなくても、夫人が強硬に反対していたとか、選挙を考えて踏み切れなかったという可能性はあります。五輪招致、五輪実施にも影響があると心配していたのかもしれません。ですから、その安倍政権が終わったというのは1つの理由と考えられます。

2つ目はその五輪です。「福島復興五輪」と銘打って開催する以上、国際的に理解が得られないかもしれないトリチウム汚染水を福島で流すのは、さすがに躊躇されると思います。ということは、4月に入って突然に内閣が「放出」を言い始めたのは、五輪の開催を断念し始めた兆候なのかもしれません。

3つ目は選挙です。長野や広島などの補選・再選挙は、「どうせ負ける」と腹を括っており、その上で、国民に不人気の「汚染水放出」をこのタイミングで表明すれば、どうせ選挙には負けるので「一種のガス抜き」にすることができる、そこで次の衆院選には影響させないという計算があるのかもしれません。

4つ目は、小泉進次郎氏の位置づけです。奇々怪々なのは、今回の放出については、菅総理が前面に出てきており、主管大臣である小泉進次郎氏はあまり出てきていません。彼は、この汚染水問題を背負わされていた格好でしたが、菅総理が進次郎氏を「かばって」自分が「盾になって」中央突破する構えに見えます。こうなると、仮に菅総理が退陣して、その次か次の次になった際に、菅氏は小泉氏の後見人としてのキングメーカーの地位を狙っているようにも見えます。

その他にも、この欄で何度かお話したように「どうして日本では、PCR検査の拡大に時間がかかったのか?」「どうして日本では、ワクチン接種が先進国で1番遅れたのか?」といったコロナ関連の政策についても、良く分からないことばかりです。こちらは改めて詳しい議論をしたいと思います。

とにかく、こうした現状は異常だと思います。確かに、水素エネルギーの問題も、汚染水の問題も複雑なテーマです。ですが、どんなに複雑でも、今後の日本の社会を大きく左右する重要な問題であることには変わりません。汚染水の問題は、とにかく徹底的に希釈してやるので、実行あるのみと思っているのかもしれませんが、風評被害が都市型世論や周辺国も巻き込んで暴風のように吹き荒れる危険性もある中で、やはり拙速な印象を与えます。

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