お金じゃない。顧客の支持を稼ぎだす「信用代理店」に無限の可能性

 

3.ボランティアを中心に活動

こんな代理店が事業として成立するのだろうか。事業としては成立する。しかし、採算は取れるのか。多分、お金を稼ぐという意味では成立しないかもしれないが、信用を稼ぐという意味では成立するのではないか。なぜなら、人々の喜ぶことしかしないからだ。

実は、社会貢献やボランティア活動をしたいという人は意外に多い。例えば、「信用代理店」を企業と考えずに、地域のサークルだと考えてみよう。サークルに参加したい人は、会費を支払って参加する。その上で、企業からの報酬や活動を通じた収益を参加メンバーでシェアする。

信用代理店が期待している人材は、定年後のシニアである。多少の蓄えや年金収入があり、社会貢献をしたい人が理想的だ。お金のためではなく、社会のため、信用のために働きたいと考える人である。そういう人が集まって、契約している会社を盛り上げる。会社の信用やブランドイメージを高める。そして、積極的に広報活動を行う。

こうした活動を通じて、企業も成長するだろう。コンサルタントと契約するより、信用代理店と契約した方が利益が上がるのではないか。

4.コロナ禍で高まる地元愛

信用代理店と契約すると、なぜ利益があがるのか。それは、消費とは、モノに対して行うものだけではなく、情報や社会活動に対する消費行動もあるからだ。

メーカーは、「良い商品を作って、安く売れば売れる」と考える。自分の会社が、「世間からどのように思われているか」は意識しないことが多い。しかし、商品が良いか悪いかを判断できる人は少ない。価格の妥当性についても比較対象がないと分からない。

一方で、どうせ購入するなら、良い会社から買いたいと思う人は多い。その商品を購入することが、地元への貢献につながるならば、多少価格が高くても良いという消費者もいる。更に、その商品を購入することが、社会貢献につながるとすれば、最早、商品そのものの価値は購買動機の一部に過ぎない。社会貢献活動に寄付する行為に対して、そのおまけに商品がついてくるという感じでも納得するのである。

更に、クラウドファンディングで支持を集めるには、商品内容よりも、プロジェクトを立ち上げる企業や個人の姿勢、考え方、ストーリーが重視される。単純に「頑張ってコストダウンしました」とか、「どこにも負けない商品です」という訴求は何の感動ももたらさない。

コロナ禍で、消費者の意識は変化している。安く作るために中国生産したから、必要な時にマスクが入手できなかった。その苦い経験は、当分忘れないだろう。地元の企業が作った商品を応援したいという気持ちは、コロナ禍で高まっているのだ。

編集後記「締めの都々逸」

「お金ばかりに 気を取られても 人の気持ちは つかめない」

企業活動は利潤の追求。昔、学校で習ったような気がします。しかし、利潤の追求しか考えない企業を誰が支持するでしょうか。同様に、人権を無視して、自分の利益ばかりを考える会社は制裁されて当然だと思います。

国は世界を構成しているし、企業は社会を構成しています。世界の秩序を乱す国は支持されないし、社会に貢献しない企業も支持されません。そう考えると、商品を売ろう売ろうと、広告するのは逆効果です。広告にお金をかけるという考え方そのものが否定されるのではないでしょうか。定年後の人達を集めて、信用代理店かできたらいいな、と思います。(坂口昌章)

image by: Shutterstock.com

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