バイデンが見誤れば核戦争に。中国が海空戦力を増強させ続ける訳

 

トランプ政権から受け継いだ?台湾重視

もちろんバイデンは慎重に言葉を選んでいて、決して中国を「敵」とは呼ばず「唯一の競争相手」といった言い方をしている。彼が就任後初めて主催する首脳級会合となった3月12日の米日豪印=クアッドで「自由で開かれたインド太平洋」を強調しても、それを「中国包囲網」と露骨に言い募ることは避けている。

しかし、そこに「台湾」という要素が入ってくると、そうした慎重な言い回しが全く意味をなさなくなるほどの危険が生じる。

「台湾は中国の一部分であり、中華人民共和国政府が全中国を代表する唯一の合法的政府である」といういわゆる「1つの中国」論は、中国にとっては建国以来の国是(国家としてのアイデンティティ)の柱であり、1978年の中米国交正常化に当たって米国はそれを承認する一方、米国が以後も台湾との民間レベルの経済・文化交流を継続していくことを中国に認めさせた。そのため、米華相互防衛条約は失効し在台米軍は撤退するが、米国は同条約の趣旨を受け継ぐ国内法として「台湾関係法」を制定。事実上の軍事同盟の継続と言われた同法の下で、しかし歴代の米政権は、いざ中国と台湾の間に軍事的緊張が生じた場合に介入するかどうかについては言明しないという「戦略的曖昧さ」を維持してきた。

これらすべては、遡れば、蒋介石総統時代の台湾が「大陸反攻」に固執して繰り返し米国に支援を要請したのに手を焼いた米ケネディ政権が、1962年6月に北京と水面下で接触し、「中国は先制攻撃を受けない限り台湾への攻撃は行わない、その代わり米国は国民党政権の大陸反攻を支持しない」という密約を交わしたことに発している。

そのように、1960年代初めから始まっている中米の“大人の関係”を無神経に掻き乱したのがトランプ政権で、

▼19年8月のF-16戦闘機66機を台湾に売却するという、近来では例のない規模の武器提供

▼20年8月のアレックス・アザー厚生長官の訪台

▼20年11月にはポンペオ国務長官が「台湾は中国の一部ではない」と明言

▼20年12月には台湾への武器輸出と台湾の国際機関への参加を推進するための「台湾保証法」にトランプが署名

▼21年1月9日にはポンペオが米台間の公的接触を禁じた「米台関係に対する自主規制」マニュアルを全面的に解除すると発表

このようにして、前政権の退陣間際まで重ねられた置き土産としての台湾肩入れを、バイデンはそのまま引き継ぐのが得策と判断したのだろう、21年1月20日の自分の大統領就任式に、1978年以来初めて、台湾の駐米代表(事実上の大使)である蕭美琴を招待した。

print
いま読まれてます

  • バイデンが見誤れば核戦争に。中国が海空戦力を増強させ続ける訳
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け