バイデンが見誤れば核戦争に。中国が海空戦力を増強させ続ける訳

 

バイデン政権は「無謀」だとする米教授の警告

5月7日付NYタイムズに「バイデンの台湾政策は余りにも向こう見ずだ」と題したピーター・ベインナート=NY市立大学教授の論説が載った。タイトルの「余りにも向こう見ず」はtruely, deeply recklessで直訳すれば「本当に、深刻に無謀」。この表現に、バイデンが「1つの中国」というガラス細工のような虚構を破壊してしまえば「世界大戦の危険が増大しかねない」という同教授の切迫感が込められている。

▼米国と台湾が公的関係を築いて中国の平和的再統一への扉を狭めるほど、北京は武力による再統一へと突き進むだろう。2005年に中国は、もし台湾が独立を宣言したら戦争に訴えるとする法律を成立させた。そして近年は、「1つの中国」論から逸脱する米国の動きに対して、軍事力を誇示して反応することを繰り返している。中国が「核心的利益」と呼ぶ〔台湾の〕領土が失なわれそうになった場合に戦争を発動しないなどということはあり得ない。

▼台湾を中国の攻撃から守ろうとするなら、ワシントンは「戦略的曖昧さ」という公式の政策、すなわち中国の台湾攻撃に対しどう対応するかを明言しない政策に立ち戻るしかない。ところがバイデン政権は、米国の台湾に対する支持は「岩のように固い」と言い、台湾防衛への関わりをより一層公的なものにしようとしてきた。「1つの中国」合意から外れて北京を挑発しておきながら台湾への攻撃を抑止できると思うのは、余りに向こう見ずな考えである。

▼抑止には能力と意志が必要だが、台湾に関して米国はそのどちらも欠いている。〔コラムニストの〕ファリード・ザカリアによれば「ペンタゴンは台湾をめぐって中国と戦う18種類の戦争ゲームを試したが、すべて中国の勝利に終わった」という。

▼1つの理由は地理。台湾は中国本土から100マイルだが、ホノルルからは5,000マイルある。台湾から500マイルの範囲内に、中国は39の空軍基地を持つが、米国は2しかない〔沖縄・嘉手納とフィリピン・クラーク〕。また中国は、「空母キラー」と呼ばれる高性能対艦ミサイルを整備してきており、米空母はこれには脆弱である。

▼さらに、緒戦において米国の指揮管制システムが電子的に破壊されるのは確実だし、さらに悪いことに、在日及び在グアムの米軍基地には精密誘導及び巡航ミサイルが降り注ぐだろう。……この先に行き着くのは核戦争である……。

「1つの中国」という暗黙合意を破ることはこのようなリスクに踏み込むことであって、それをバイデンも菅も本当に分かった上で覚悟を決めてそうしているのかどうかということである。

print
いま読まれてます

  • バイデンが見誤れば核戦争に。中国が海空戦力を増強させ続ける訳
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け