バイデンが見誤れば核戦争に。中国が海空戦力を増強させ続ける訳

 

「台湾」を絡ませることに日本が加担

その延長上に4月16日の日米首脳会談も位置付けられていたのだが、それをそうと分かって菅義偉首相がその場に臨んだのかどうかは定かでない。

このことを考える上で意味のあるエピソードは、4月3日から4日にかけて中国の空母「遼寧」を中心とする6隻の艦隊が沖縄本島と宮古島の間を通過したのを米第7艦隊のイージス駆逐艦「マスティン」が並走・監視した際に、中国空母を挟むように海上自衛隊の護衛艦が行動している写真が公開されたことである。

と言っても、これはそれほど緊張するような話ではない。そもそも沖縄本島と宮古島の間は公海だから通航は自由である(のに日本では時折「宮古島との間を突破して中国艦が…」と恐ろしげに報じられることが少なくない)が、その米艦は意図的か偶然かはともかくそこに居合わせて中国空母と並走し、その写真を船員のSNSで公開した。ところがそれは、米艦の艦長がデッキチェアのようなものに座って脚を投げ出して中国艦を眺めているというのんびりした光景で、しかしよく見ると遠くに自衛隊の護衛艦が写っていたということで話題になったのである。

このことは両義的で、一方では、米(日)vs中の軍事的な関係は一触即発というようなものではないということ、他方では、そうは言っても日本の海自はすでにここまで深く米艦隊の指揮下に組み込まれて対中国の作戦行動に従事しているということである。

それを踏まえて日米首脳会談の共同声明を見ると、まず真っ先に「日本は同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意した」と、日本の主体的な防衛努力が謳われているのが目立つ。以下、いろいろな課題が列挙されているが、その果てに台湾へのコミットメントがさりげなく出てきて、「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」とされている。

1つの含意は、2015年安保法制による集団的自衛権解禁を背景に、日本は敵基地攻撃能力を構想するなど自ら防衛力を強化し、すでに米軍と共に中国艦隊の進出に対して監視や牽制を実施しているけれども、いざ台湾有事となれば、米軍に対する後方支援というに止まらず、新設の水陸機動団の前線進出による米海兵隊との共同作戦などに踏み込むことを辞さないという方向性が浮き出ている。

もう1つの含意は、そうは言っても中国との全面対決は避けたいので、「台湾の平和と安定」とは言わずに「台湾海峡」と言い、その「両岸問題の平和的解決」と言うことによって、中台関係は中国の国内問題であるという北京の「1つの中国」論に辛うじて準じようとしているのである。

これに署名した菅首相は、翻って中国とは一体どういう関係を築こうとしているのか。それを思えば余りにもトリッキーな台湾との関係の論理構成である。

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