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単に貸すだけじゃない。無印がキッズ用家具のサブスクを始めた狙い

無印良品を展開する良品計画は4月22日、今年1月から展開していた家具のサブスクリプション(月額定額)サービスを拡大し、ベビーベッドなど子ども用の家具の取り扱いも始めました。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』著者の理央周さんは、ただ貸すだけじゃないトータルでのマーケティング戦略として大いに参考になると、その狙いと勝算を解説。横浜での新たな店舗形態のチャレンジについても期待感を持って紹介しています。

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無印良品はなぜ、ベビーベッドの、サブスクリプションサービスを始めたのか?~その勝算と目論見は?

無印良品が、子供用の家具を毎月定額で貸し出す、いわゆるサブスクリプションのサービスを、始めました。今号では、なぜ無印良品がこの時期に、サブスクを始めたのか?その背景にある理由は何か?ビジネスのヒントになるポイントは何か?について、解説していきます。

無印良品のベビーベッドのサブスクリプション

無印良品のサイトに行くと、ベビーベッド、子供が座ってさらに足を乗せることができるトリップトラップという椅子と、その椅子につけられる赤ちゃん用の椅子、の3種類をサブスク、すなわち月額定額料金を支払うことで借りることができるようになっています。

ベビーベットの方は、薄いベージュのウッド調で、落ち着いた印象のデザインになっています。ベッドそのものはコンパクトサイズですが、赤ちゃんが寝る場所の下のところに、物が置ける底板がついていて、高さが2段階に調整できるという、便利な構造になっています。

サブスクで支払う料金体系は、借りる長さに応じて、月額定額制が5段階に組まれています。ベッドは、販売価格が税込59,800円のものを、3ヶ月借りると月当たりの定額で、ひと月6,500円。最大18ヶ月まで借りられ、その時はひと月3,000円になります。チェアの方は、ノルウエーのストッケ社のもので、デザインもシンプルでこのベビーベッドにぴったり。販売価格が31,900円のものを、6カ月契約で、ひと月2,000円、24カ月だとひと月1,300円での月額支払い料金になります。

この商品構成に注目してみましょう。メインになる商品はベッドです。そして、ベッドを借りてみよう、とサイトに来た人は、同時に、類似商品のベビーチェアがあるのに気づき、「一緒に借りよう」となるでしょう。このように、売り伸ばしを狙い、お客様が買う商品に、近しい商品を買ってもらおうとおすすめすることを、「クロスセル」と呼びます。

また、チェアを借りたくなった人は、そのチェアに取り付けることができる、赤ちゃん用のチェアーをさらに借りたくなるでしょう。こちらのように、買ってもらう商品より、一段上の商品を買ってもらおうとおすすめすることを、「アップセル」と呼びます。既存顧客に対して売り伸ばしたい時の、常套の戦略になりますが、同時にお客様から見ても、選べる楽しさも増え、嬉しい商品ラインアップになります。

無印良品が見つけた市場機会と顧客価値

無印良品では、去年テスト的にこのサービスを提供したところ、新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、今後も需要が見込めると判断して、今回本格的に始めたとのことです。

お客様にとって、赤ちゃんはすぐに大きくなるため、ある程度の時期を超えるとベビーベッドが、不要になります。そうなると誰かにあげるとか、処分するということになりがちですが、借りて返す、という選択肢が増えたら、その手間を省くこともできます。

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無印良品の方も、お客様にサブスクで借りてもらう期間中に、子供用の服やベビーグッズや、自分のものもついで買いする機会も増えるので、ここでも売り伸ばしに繋がります。そして、この定額期間が終わったとしても、このサブスクサービスに対するお客様の満足度が高ければ、無印良品のファンになり、サブスク終了後も、商品を継続的に買ってもらえることにつながります。

また、サブスクを利用してくれたお客様にお子さんがいること、何歳くらいか、という顧客データを入手できます。このデータを活用し、お子さんの成長に応じたおすすめ商品の、メールやDM、クーポンなどを送ることもできます。お客様のことを知っていればいるほど、そのお客様に適した商品やサービスを提供できることになるため、単なるベビーベッドのサブスク、というだけではなく、トータルでのマーケティング戦略として、参考にできることが多い企画です。

無印良品の新しいチャレンジ

無印良品が様々な新しいチャレンジをしているのが目立ちます。横浜の高島屋港南店が昨年閉店した跡地に、今まであった無印良品の港南バーズを移転して、それまでの9倍の面積の大規模店舗をオープンしました。高島屋がなくなって困っていた、という声を聞いて、この決断をしたそうです。

まずは4月から1階で服や雑貨を売っていて、さらにそこに5月から地下では食品の販売も開始しました。ここでは、クイーンズ伊勢丹と中島水産の2社と協業して、生鮮食品も販売しています。内訳は、無印良品が約7000点、クイーンズ伊勢丹と中島水産が、それぞれ1万点以上の商品を揃えているとのことで、かなりの規模です。

ここでは、単に食材を売るということだけではなく、お菓子やコーヒー豆、とかナッツやドライフルーツ、といった50種類以上の食品を、1グラムいくらで、「計り売り」していたりするので、私もそうですが、料理をする人にとっては、珍しいものも手に入るお店で、人気も出そうです。

さらに、地下1階にはキッチンもあり料理のプロから学べたり、それをインスタで配信できるようにするそうです。こうなると、お客様は単に買い物に来るだけではなく、楽しみに来る、ということになり、店として選ばれる理由にもなりますし、店にいる時間も増えて、さらに売り伸ばせそうです。

小売業は買いに来る頻度が高いほど売り上げが上がります。生鮮食品は、色々な商品の中でも、最も買いに来る頻度が高いカテゴリーなので、これによって、1階の服と雑貨の店舗でも、ついで買いが起こる可能性がありますよね。

サブスクを開始したり、食材の店をエンタメパークのようにしたりと、無印は新しい手を打ってきますが、どれもやはりお客様の隠れたニーズをしっかりと見つけ、そこに自社のできることをあてている、という印象があります。その意味でも、このサブスクサービスや、生鮮食品の販売がこれからどう進化していくのか、とても楽しみです。

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image by:VTT Studio / Shutterstock.com

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