NHK人事に菅政権が圧力?毎日新聞スクープが炙り出す「独立性」の嘘

 

【サーチ&リサーチ】

2016年7月21日付
問題発言を繰り返した籾井勝人会長が再選に意欲を示す中、「NHK関係者は「官邸と太いパイプをもつ板野裕爾NHKエンタープライズ社長(62)が、籾井会長の後任に選ばれる可能性がある」と指摘する。板野氏は4月に専務理事を退任するまで放送総局長であり、「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターを降板させる路線を主導した、と見られている」と。

*籾井氏に続く会長になる可能性があった。最終的に選ばれたのは上田良一氏だった。

2019年4月9日付
「NHKは9日、子会社のNHKエンタープライズで社長を務める板野裕爾氏を専務理事に復帰させる役員人事を発表した。25日付。経営委員会は同日の会合で人事案に賛成多数で同意したが、2委員は棄権。全会一致とはならなかった。会合後に記者団の取材に応じた石原進経営委員長によると、棄権したのは、小林いずみ・ANAホールディングス社外取締役と、佐藤友美子・追手門学院大教授。関係者によると、上田良一会長から人事案が示された際、2委員は若手を登用する必要性や板野氏の資質に対する疑念などを述べ、棄権したという」。

*板野氏の専務理事復帰については、氏を放送総局長に登用した籾井勝人会長(当時)でさえ、朝日新聞の取材に対して次のようにコメントしていた。

2019年5月19日付
「板野氏をかつて放送総局長に登用したのは籾井勝人前会長だ。だが、その籾井氏までもが、板野氏と政権の関係が強すぎるとして、1期2年で総局長を退任させ「彼を絶対に戻してはいけない。NHKの独立性が失われてしまう」と当時の朝日新聞の取材に対しても口にするようになった」。そして、前田会長の就任。

2020年6月4日付
タイトル「前田NHK会長の評判と役員人事、官邸との距離」の記事で、副題に「官邸の圧力をかわし板野副会長を拒否したものの、『政治』シフトで報道姿勢は変わらず」と。

*そして、今年4月の人事(板野氏の“返り咲き”)が衝撃を巻き起こす。

2021年4月20日付
タイトル「「政権に近すぎる」NHK役員を再任 元幹部「異常だ」」の記事中、以下の記述。「今回の役員人事が決まったのは、任期満了となる24日のわずか4日前だった。「本来は6日の経営委員会で人事案が出される予定だったが、直前に何らかの理由で順延した」と証言するNHK関係者もいる」と。

*「本来は6日の経営委員会で人事案が出される予定だったが、直前に何らかの理由で順延された」という部分を《毎日》が深く取材して、きょうの記事が編まれたことになる。

●uttiiの眼

新型コロナウイルスの「第5波」が懸念され、現にリバウンドの兆候が現れている時にオリンピックを強行しようとする菅政権。当然、NHKから批判的な報道が相次げば、政権の支持率は今以上に下がることになるだろう。その時に備えて、テレビの報道をコントロールできる状態を保ち、あわよくば総選挙も勝ち抜きたいと考えた上で、「人事介入」があったのではないか。

今のところ、NHKは「退任案」が配られた点を否定しているようなので、取材はさらに続くことになるだろう。他紙の後追いと共に、続報を是非期待したい。

image by: Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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