中国・習近平「軍部完全掌握」のウソと本当。軍事専門家が指摘する意外な事実

 

第2の指標は習近平氏の「盟友」が任務を達成して第1線から退いたことです。軍事パレードから4カ月近く経った2015年12月31日、人民解放軍で総後勤部の政治委員を務めてきた劉源上将(大将)の退役が発表されました。

劉氏は劉少奇元国家主席の息子で、習近平氏とは幼なじみの間柄でもあります。対米・対日最強硬派として知られる一方、習氏の盟友として、特に汚職摘発を通じて共産党と軍内部ににらみをきかせてきました。2012年11月の共産党総書記就任以来、習氏は共産党内に蔓延した汚職の摘発を一気に進め、これによって政敵の勢力を殺いできました。むろん、汚職摘発の対象は軍も例外ではなく、郭伯雄と徐才厚という共産党中央軍事委員会の二人の副主席(ともに上将)を摘発したのは周知の通りです。

軍改革についても、人民解放軍のあらゆる権限を握ってきた巨大な陸軍との正面衝突を避け、軍近代化の大義名分のもとに海空軍と第2砲兵の勢力を徐々に拡大する路線をとり、成功に導きました。その直後、第2砲兵はロケット軍という名で陸海空軍と並ぶ位置に昇格します。

劉氏の退役は、習氏による汚職摘発と軍改革が一段落したことを示している面があるのです。このように、軍事パレードが内外にアピールしたものと劉氏の退役を併せ読むと、習氏の軍掌握が2015年だったことが、紛れもない事実として迫ってくるのです。(小川和久)

image by:Gil Corzo / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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