なぜ、最近の「ビジネス書」は“物足りない”本が多くなってしまったのか?

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大型書店に行くと夥しい種類の本がズラリと並んでしますが、中でも多くのサラリーマンが足を止めているのがビジネス書のコーナーです。今回のメルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』では、Evernote活用術等の著書を多く持つ文筆家の倉下忠憲さんが、昨今のビジネス書に感じた「物足りなさ」の理由と、多くのビジネス書が誇大な表現を使い続けることによって「置き去り」にしてきたモノについて深く考察しています。

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ビジネス書が置き去りにしてきたもの。人文的実用書に向けて

圧倒的な物足りなさ

最近のビジネス書コーナーに並ぶ実用書に心躍ることが少なくなってきた。言い換えれば、心に残らなくなってきたのだ。

そもそも書店に並んでいる表紙やタイトルを見ても手に取ろうとは思えないし、気まぐれに手に取った本の目次や内容をパラパラと眺めていても「これ!」という感じはしない。もうこの段階で「買おう」とすら思えないのだ。

私が興味を持つ分野の本であれば、「えいや」と買ってみることもあるが、読み終えるまでの時間はただただ苦痛でしかない。

別に間違ったことが書いてあるわけではないし、文章が下手くそというわけでもない。ただただ圧倒的につまらないだけである。

たしかにそれらの本は、「わかりやすい」のかもしれない。あるいは、綺麗に理論が構築されているのかもしれない。しかし、そういった要素はつまらなさを解消はしてくれないし、逆効果であることすらある。

これは極めてまずい状況だと言えるだろう。なぜなら「本」はつながっているからだ。一冊の本への評価は、その本の評価だけに留まらず、ある種の外部性を持っている。

たとえば、わかりやすいけどつまらない本は、心に残らないばかりか、マイナスの印象が残ることもある。そうなると、読者は実用書というジャンル全体にマイナスの印象を持つかもしれない。もしそれがはじめての読書であれば、本というカルチャー全体に不信感を覚えることすらある。

そのようなことが広範囲で発生すれば、本の売れ行きがよくなることは考えられない。むしろ徐々に悪くなっていくだろう。特に現代では、実用的ノウハウを伝える媒体は書籍以外にもたくさんある。ある種の「わかりやすさ」で言えば、そうしたメディアの方が優れていることすら珍しくない。

そんな環境において、「おもしろくない本」を一体誰が手に取るだろうか。お金を払って買おうと思うだろうか。もし、書店に「わかりやすいが、おもしろくない本」が溢れ返っているならば、そうしたジャンルの売り上げは厳しくなって当然である、というのは決して言い過ぎな表現ではないだろう。

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