同じ7月27日に平壌で開かれた「全国老兵大会」で、金正恩総書記は「新型コロナウイルス危機と経済制裁の長期化で『戦争状況に劣らない試練』を迎えている。逆境にも勝利するように」と国民に訴えた。昨年の同大会で金正恩総書記は「核抑止力により、国の安全と未来は永遠に担保される」と演説したが、今年は「核戦略への言及」はせず、「我が革命武力はいかなる情勢や脅威にも対処する万端の準備を整えている」と述べるにとどまり、「米帝国主義」といった戦争当時の描写を除いて米韓を非難する文言もなかった。米韓への刺激を抑え、対北政策を見直して北朝鮮に対話を呼び掛けているバイデン米政権の出方を見定める意図もあった。
再度言うが、南北・米朝対話再開の条件として敵対視政策の撤回を掲げていた北朝鮮が、突然態度を変えた理由は明白だ。先にも述べたように「国連制裁と新型コロナによる国境封鎖に伴う経済難と食糧難が深刻になり、外部の支援が火急のことになった」からで、金正恩政権が打ち出した「自力更生」が限界に達したことを意味している。
今回の合意が文在寅大統領の業績作りのための任期末“平和ショー”に転落することだけは避けなければならない。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)
北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で伝える宮塚利雄さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ
image by: Alexander Khitrov / Shutterstock.com
ページ: 1 2