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遅すぎた日本の自衛隊機アフガン派遣。決心のできぬ政府が国を滅ぼす

アフガニスタン情勢を受け日本政府は23日と24日、航空自衛隊の輸送機3機を現地に派遣しました。これに対し「10日以上遅い」とその決断と実行の遅さを指摘するのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんです。その言葉どおり現地は既に混迷を極め、日本人とアフガニスタン人協力者を輸送機に迎え入れるのが困難になっていると伝えられます。小川さんは、法的にも部隊にも機材にも問題がないのに首相が「決心」できないのは、官僚の知識不足のせいと過去の例も紹介し解説。一事が万事緊急事態に対応できない現状では、国が滅んでしまうと最大級の警鐘を鳴らしています。

首相が「決心」できないと日本は滅びる

ようやくと言いましょうか、航空自衛隊の輸送機がアフガニスタンに向けて出発しました。

「政府は23日、イスラム主義勢力タリバンが全土を掌握したアフガニスタンから邦人らを退避させるため、航空自衛隊のC2輸送機1機をアフガン近隣国に派遣した。24日にもC130輸送機2機を出発させ、アフガンで働く国際機関の日本人職員のほか、日本大使館や国際協力機構(JICA)が雇用する現地職員らを近隣国に移送する。(中略)

 

C2は、拠点となる近隣国まで隊員らを運ぶ。空自小牧基地(愛知県)所属の2機のC130が、拠点とアフガンの首都カブールの国際空港とを行き来して邦人らを退避させる」(24日付 読売新聞)

何回も申し上げているように、危機管理の要諦は「必要なことを適切なタイミングで行う」ことにあります。それを前提にすると、アフガンの政権が崩壊した12日の直後のあたりでは現地入りしていなければならず、そこからすると10日以上も遅いことになります。派遣された自衛隊には何の問題もありません。いつでも出発できる態勢にあったからです。むろん、外国の旅客機をチャーターして現地に向かわせることも簡単にできたはずです。

ここで厳しく問われなければならないのは首相官邸の機能不全です。法律的にも派遣できる、部隊は待機している、機材も整っている、現地も一定の安全確保ができている。それなのに10日以上も遅れてしまったのは、首相官邸をはじめとする日本政府には「決心」ができないからです。

この「決心」とは、自衛隊や世界の軍隊の指揮官教育で叩き込まれるもので、敵の大軍が迫ってきているといった目の前の緊急事態に対して、いかに素早く、正面突破、迂回攻撃、退却などを的確に選択し、味方の損害を最小限に抑え込みながら戦うか、という点に主眼があります。世界のビジネスパーソンの教育でも重視されています。

どうして首相官邸は条件が整っているのに迅速に自衛隊機やチャーター機を派遣できなかったのでしょうか。意外かも知れませんが、首相官邸に航空機の運用についての基礎知識を備えた人材が配置されていないということに尽きるのです。だから、首相に適切なタイミングで「決心」してもらうことができなかったのです。

一例をご紹介しましょう。2004年10月、当時の小泉純一郎首相は中越地震に見舞われた新潟県と兵庫県豊岡市の水害被災地を1日で視察し、被災者を激励したいと考えていました。しかし、当日は大雨でした。飯島勲首相秘書官が午前4時に防衛省の北原巌男官房長に電話すると、雨なのでヘリコプターは飛べませんと返事がありました。北原官房長は部下の官僚に聞いたのでしょう。

しかし、どうしても現地で被災者を激励したいと思っていた小泉首相は新幹線と自動車で移動すると言いました。それでは新潟と豊岡を回ることなどできませんから、飯島秘書官は航空自衛隊に相談しました。

即答が返ってきました。首相官邸屋上のヘリポートから陸上自衛隊のヘリで羽田空港に飛び、羽田空港に回しておく航空自衛隊のU-4多用途支援機で新潟空港に飛び、そこからは陸上自衛隊のヘリで被災地に入る、というものでした。U-4はビジネスジェットのガルフストリームIVです。U-4なら雨雲を突き抜けて上空に出て30分ほどで新潟空港です。雨は問題ありません。

このときは、そこまでに時間を食っていたので実施されませんでしたが、予定通り朝から動いていれば、新潟空港に戻ったあと、U-4で兵庫県の但馬空港に飛び、同じように陸上自衛隊のヘリで現地入りすれば、夕方には首相官邸に戻ることができたのです。

これは北原官房長だけの問題ではなく、日本政府の大部分の官僚の姿なのです。基礎知識に欠ける官僚や官僚が選んだ「専門家」を頼りにしている限り、自衛隊機派遣だけでなく、コロナの問題についても的確な「決心」をすることはできません。これでは困ります。「決心」が必要な問題は、すべてが国民の生命財産に関わる重要なテーマなのです。

菅義偉さんが首相を続けるのか、あるいは違う首相になるのかわかりませんが、私が知る限り、下馬評に挙がっている政治家は全員、官僚頼みの顔ぶれです。よほど考えを改めてもらわない限り、「決心」できない日本国は続きそうです。(小川和久)

image by:M101Studio / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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