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030508-N-0000X-001 At sea aboard USS Stethem (DDG 63) ミ A Tactical Tomahawk Cruise Missile launches from the guided missile destroyer USS Stethem (DDG 63) during a live-warhead test. The missile traveled 760 nautical miles to successfully impact itユs intended target on San Clemente Island, part of the Naval Air Systems Command (NAVAIR) test range in Southern California. The Tactical Tomahawk is the next generation of Tomahawk cruise missile, adds the capability to reprogram the missile while in-flight to strike any of 15 preprogrammed alternate targets, or redirect the missile to any Global Positioning System (GPS) target coordinates. It also will be able to loiter over a target area for some hours, and with its on-board TV camera, will allow the war fighting commanders to assess battle damage of the target, and, if necessary redirect the missile to any other target. Launched from the Navy's forward-deployed ships and submarines, Tactical Tomahawk will provide a greater flexibility to the on-scene commander. Tactical Tomahawk is scheduled to join the fleet in 2004. U.S. Navy photo. (RELEASED)

日本単独で発射抑止は不可能。北朝鮮「新型巡航ミサイル」への対抗手段はあるか?

北朝鮮メディア『労働新聞』は、新たに組織された「鉄道機動ミサイル連隊」が15日、列車から発射されたミサイルが800キロ先の日本海上の目標に正確に命中したと報じたことが話題になっています。これに先立つ2日前の13日には、新型の長距離巡航ミサイルの試射成功を発表していた北朝鮮。この時に公開された複数の写真から、アメリカの初期型トマホークに似た構造であると分析するのは、軍事アナリストの小川和久さんが主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』の共著者である静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授の西恭之さんです。西さんは今回、「自走式発射機は再利用できるか?」「日本はどう対処したらいいか?」など、読者が抱いたこの新型巡航ミサイルへの疑問に答えます。その中で、搭載する小型核弾頭が完成しているかは不明であること、低空監視体制の強化が必要となれば、相応の手段はあると伝えています。

北朝鮮の巡航ミサイルの能力と対策

北朝鮮の朝鮮中央通信は9月13日、同国の国防科学院が11日と12日に新型の長距離巡航ミサイルの試射に成功したと報じた。北朝鮮国内で楕円や8の字の軌道を描いて1500キロ飛行し、目標に命中したという。北朝鮮の発表が事実なら、沖縄本島を含む日本列島が射程に入る。今回は、このミサイルについて読者からいただいた質問にお答えしたい。

1)朝鮮中央通信が配信した写真では、自走式発射機の後ろに炎が勢いよく上がっているが、それでも発射機は再使用できるのか?

おそらく再使用できる。各国のミサイル発射機には、内部でミサイルに点火して発射(ホットローンチ)しながら再使用するものも多い。日米の水上艦のMk.41 垂直発射システム(VLS)は、排気を発射筒とは別の管に流して甲板上に排出する装置を備えているので、ミサイルを発射すると、その発射筒の隣の細長い区画が開いて炎が上がる。北朝鮮のこのミサイルの発射筒は発射炎をじかに排出するので、耐熱性はVLSほどなくてよい。

一定以上の大きさのミサイルは、発射筒の中でロケットエンジンを点火すると艦艇や車両を損傷するので、別の装置で発生させたガスの圧力で射出し、空中で点火するコールドローンチ方式を採用している。北朝鮮は2016年4月、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星1号」を水中から発射して点火に成功し、陸上配備した準中距離弾道ミサイル(MRBM)「北極星2号」にもコールドローンチ方式を採用している。

2)ミサイル自体の噴射によって、楕円や8の字の軌道を飛び続けることができたのか?

この巡航ミサイルが飛び続けるための推力は、発射時のロケットエンジンではなく、空中で始動したターボファンエンジンの噴射から生み出されている。つまり、無人のジェット機が周回飛行したということだ。

発射中の写真には、ミサイル後方に短いロケットブースターが映っている。巡航中の写真ではブースターが投棄され、本体後部から尾翼3枚、中央部から主翼2枚を広げている。このしくみはトマホークと同じだ。

北朝鮮の長距離巡航ミサイルは、吸気口(エアインテーク)が本体から飛び出ており、トマホークの初期型(1980年代)に似ている。トマホークの後期型(2000年代)は、吸気口の前にくぼみがあり、吸気口が本体と同一平面に収められている。

3)日本はどのように対処すべきか?

日本単独でこのミサイルの発射を抑止することは難しい。日本に対する攻撃は、米国にとって米本土に対する攻撃と同じであると、日米同盟を利用して北朝鮮に認識させる必要がある。仮に北朝鮮が日米同盟下の日本を攻撃する場合、攻撃の目的は米国の行動を変えること、具体的には米軍の日韓への来援を阻止して米国に停戦を強制することだからだ。

北朝鮮の金正恩《キムジョンウン》国務委員長は今年1月、朝鮮労働党第8回大会で、「中・長距離巡航ミサイルをはじめとする先端核戦術兵器」の開発成功を報告した。また、北朝鮮当局は今回初めて自国の巡航ミサイルのことを、核兵器を指すことが多い「戦略兵器」と呼んだ。

しかし、このミサイルに搭載できるほど小さな核弾頭を北朝鮮が保有している証拠はない。米国の巡航ミサイル用のW80核弾頭は、本体が重量130キログラム、全長80センチ、直径30センチにまとめられている。

また、北朝鮮国内で軌道を周回して飛ぶことは、慣性誘導と衛星測位システムを利用すればできるが、トマホークのように下方の地形をデジタル地図と照合したり、目標の映像と前方の風景の映像を照合したりする機能があるのか不明だ。

北朝鮮の長距離巡航ミサイルは「新たな脅威」「レーダーで捕捉することが難しい」とも報道されているが、実は、レーダーで捕捉することが弾道ミサイルより難しいとはいえず、亜音速なので迎撃は弾道ミサイルよりも容易だ。

低空飛行する巡航ミサイルを捕捉することが、高空・宇宙空間を監視する弾道ミサイル防衛レーダーには難しいのは当然で、それはより低空を監視するレーダーサイトや早期警戒機の役目だ。低空監視体制の強化が必要なら、2010年代に米軍がメリーランド州上空の係留気球に搭載したレーダーを、航空自衛隊が導入するグローバルホーク無人偵察機に搭載してもよいのではないか。(静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授・西恭之)

image by: U.S. Navy photo, Public domain, via Wikimedia Commons

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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